大リーグ「ピッチクロック」導入に学ぶ、リーダシップの10の教訓

マリナーズ戦でピッチクロックで違反をとられ、苦笑を浮かべるエンゼルスの大谷翔平(2023年4月5日、Steph Chambers/Getty Images)

7. 効率性バンザイ!

試合がテキパキ進むのに慣れてくるにしたがって、多くの選手は利点もあると感じるようになっている。たとえば、グラウンドでの緊張感は増し、バッターボックスやベースラインでも集中力が高まった。投手は打者に合わせる隙を与えにくくなった。リーダーシップの教訓。ミーティング、プレゼンテーション、あるいはメモなど何でもいいが、あるタスクに時間やその他の制約を課すことに対する恐怖心や心配といった自然な反応は、言われるほどたいしたものではないかもしれない。

8. 柔軟性は不可欠

ピッチクロックをはじめとするルール変更は成功しているように見えるが、それでも大リーグと選手会は必要に応じて調整していく姿勢を示している。実際、新ルールに関しては今シーズンの開幕直前にいくつかの微調整が加えられた。といっても、それは変更内容を後退させるものではなく、もっともな理由のある懸念や疑問に対応したものである。リーダーシップの教訓。どんなに成功したように思える取り組みであっても、信念のあるリーダーは適宜修正していく必要性を認め、またそうした見直しを歓迎する。

9. 変化を逆手にとる

これは褒め言葉だが、将来の野球殿堂入りが確実視されるマックス・シャーザー(メッツ)は、今回のルール変更が導入されてから、先頭に立って新ルールを限界まで試し、一部に疑問を呈したり、自分に有利になるような方法を探ったりしてきた。競技者なら当然のこととも言える。リーダーシップの教訓。賛否のあることを実行に移す場合、懐疑的な見方がつきまとうという点は想定しておくようにしたい。願わくば、そこでの懐疑は、やみくもに否定しようとするのではなく、妥当性などを吟味する建設的なものであってほしい。

10. いまの戦略を絶対視しない

ピッチクロックの適用に関してルールブックはまだ変更の余地を残している。この先、長いシーズンが控えているので、その間にはおそらく新ルールをめぐって新たな問題も持ち上がってくるだろう。今シーズンの162試合を終えたあと、大リーグと選手会はピッチクロックの適用の仕方をあらためて点検することになるはずだ。リーダーシップの教訓。どんな取り組みも完璧にうまくいくことはない。どんな戦略にも欠点はある。一連のプロセスに見直しの段階をとり入れ、修正が必要ではないか検討するようにしよう。

大リーグがビジネス界全般で応用できる「ハウツー」のモデルになることはめったにない。大リーグは旧態依然な体質で知られ、これまで労使関係もひどいありさまで、ビジネス上の決定にあたっては常識や経済学の基本より恣意や感情が優先されがちだったからだ。だがピッチクロックの導入は、ルール変更自体としても、その導入にいたるプロセスとしても、球界にとって大きな成功になっているだけでなく、企業のリーダーたちにとっても大いに学ぶところがありそうだ。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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