AIはビジネスの「即戦力」になれるのか? ChatGPTへの期待と不安
人間とのコミュニケーションを軽妙に交わせるOpenAIのチャットボット「ChatGPT」に多くの関心が集まっている。リー氏の著書を構成する物語の1つ「金雀と銀雀」の中にも、人と深く会話を交わせるAIが「教師」として、2人の主人公を育てる未来が描かれている。リー氏によるとAIはいま「AI 2.0」と呼ぶべき変革の段階を迎えているという。
「従来のAIは、まず私たちが求める用途からデータセットを定義して、そこから最適化を図ってきました。ところがChatGPTのような大規模言語モデルを使ったジェネレーティブAIは十分な量のデータがあれば自ら学習を深めることができます。用途に合わせたファインチューンを行えば通訳になれます。さらに専門知識を加えることによって例えば『金融と、日本語・中国語の知識に長けた技術翻訳家』にも成長します。以前は機械による自動翻訳システムを開発するために途方もない時間と労力を要しましたが、いまは数日、あるいは数時間で同じことができます」
ChatGPTには既存のデジタルツールをよりパワフルなものに再構築したり、従来は存在しなかった便利なサービスを作り出せる可能性があるとリー氏は着目する。
Microsoft(マイクロソフト)はChatGPT系の新しい言語モデルを自社の検索エンジン「Bing」に組み込み、ウェブ検索の在り方を変えようとしている。さらに、同社はWordやPowerPointのような、コンシューマー向けオフィス統合ツールのアプリケーションにもChatGPTを統合する計画があるようだ。これらのソリューションに対するリー氏の展望はポジティブだ。リー氏は検索エンジンもまた複雑なキーワードの組み合わせに対応しながら、ユーザーインターフェースを作り込むことによって、AIと会話を交わすように意中の結果を見つけ出せるようになるだろうとした。
「AIはビジネスの良きアシスタントになると思います。次世代のツールは従来のように複数のテンプレートから選ぶのではなく、ユーザーの使用目的にカスタマイズされたテンプレートをすばやく作ってくれるでしょう。プレゼンテーションやパンフレットに使いたい画像素材も、検索せずにAIが画像を生成してくれるかもしれません。さらにChatGPTがプレゼンテーションや論文の草稿作成を助けてくれれば、ユーザーはより上質なドキュメントを短時間で仕上げられるようになります」