人生の40年以上をIT業界の第一線で過ごし、コンピュータネットワークの発展に貢献してきたエリック・ベナモー氏の来日に合わせてインタビューの機会を得た。ベナモー氏に、いまAIとその周辺にある最先端のデジタルテクノロジーを見つめる視点を共有していただいた。
コンピュータネットワークの歴史にエリック・ベナモーあり
エリック・ベナモー氏は米スタンフォード大学を卒業後、マイクロプロセッサ開発のエンジニアとしてキャリアを積み上げてきた。その後はコンピュータネットワークのエキスパートとしての道を拓き、1990年には米3Com(スリーコム)のCEOに就任する。同社では共同創業者であるロバート・メトカーフ氏らとともにEthernet(イーサーネット)やWi-Fiに関わる技術の誕生に尽くした。この頃にPalmのデジタル端末やOSの開発も指揮したベナモー氏は、現在のスマートフォンが誕生する素地を築いた立役者でもある。当時のベナモー氏の活躍ぶりに惚れ込んだスティーブ・ジョブズ氏は2度もラブコールを送ったが、ベナモー氏はこれを丁重に断ったという。
Netscapeシリーズの開発にも大事な一翼を担い、ウェブブラウザ普及の礎を築いたのもベナモー氏だ。その後も11社の上場企業を含む、25社以上の取締役を務め上げてIT業界の発展に大きな足跡を残した。
そして2004年、ベナモー氏は自身の会社であるBenhamou Global Ventures(BGV)を米国シリコンバレーに創立した。
クロスボーダー企業の飛躍を支援するBGV
来年、2024年に創立から20周年のアニバーサリーを迎えるBGVでは、世界規模での事業成長を目指すクロスボーダー企業や通信市場にフォーカスして、有望なITスタートアップにアーリーステージから積極的な投資を行っている。クロスボーダー企業については成熟期を迎えたシリコンバレーよりも、イスラエルに注目していたが、最近はさらにインド、欧州が活気に満ちているという。
「イスラエルは、小さな国からでも世界のカテゴリーリーダーになるスタートアップ企業を興せることを世界に証明しました。現在は欧州にオーストラリア、インドでも同様にクロスボーダー企業が元気です。私は、これから日本でも世界を目指すスタートアップが出てくるものと期待しています」(ベナモー氏)