AI

2023.03.07

グーグルチャイナ元社長が語る「2041年のAIと人の関係」

アップル、マイクロソフト、グーグルでAIの研究・開発の最前線に身を置いてきた人工知能学者のカイフー・リー氏。

AIがターゲティング広告の在り方を変える

リー氏は次世代のAIによって「ターゲティング広告」にも期待を寄せている。これからの広告は、ウェブサイトなどを閲覧するユーザーの趣味嗜好をAIが把握し、どのような情報を求めているかを理解しながら、グラフィックや動画、テキストなどを自動生成するようになるかもしれない。

「未来のテスラのターゲティング広告を想像してみましょう。スピードを求める方には、テスラがF1サーキットを走っている広告を生成します。自動車の環境性能を重視する方には、EVであるテスラのエコロジー性能をガソリン車と比較したデータを広告で見せます。ガジェットファンにはテスラのギミックにハイライトした広告が表示されるといった具合です」

次世代のAIにより新しいビジネスが生まれる機運は方々で高まっている。リー氏もそれを肌で感じているという。ただ、一方ではChatGPTのようなジェネレーティブAIが生成する情報には、現状はまだ多くの誤りが含まれている。リー氏は「すべての情報が真実ではないことにも留意しながら、私たちは次世代のAIに向かい合うべきだ」としながら、いま人間が取り組むべきいくつかの課題を指摘した。

「1つはとても難しいことですが、偽情報の元を取り除くことです。元の情報に誤りや偏りがあれば、AIがこれを『もっともらしい情報』に増幅してしまうからです。特定の用途に対して次世代のAIをより安心・安全に使いこなせるようにする技術的な仕組みとノウハウを蓄積することも肝要です。さらに3つめとして、今後は言語モデルをよりコンパクトにすることが求められるでしょう」

AIの進化を正しい方向に導くために「大事な3つのこと」

『AI 2041』の中では、AIと人間との関係が時に温かく、そして時には鋭い切り口からスリリングに描かれている。本編第2話「仮面の神」では、AIによる高度なコンピュータビジョンが生成する画像や動画の真偽を取り巻く問題を提起している。

「AIそのものは中立的な存在だと私は思います。ですが、どんな技術やツールもそうであるように、AIもまた悪意ある使い方をすることにより危険性をまといます。画像や動画のディープフェイクはその一例です。ディープフェイクの真贋を人間の目だけで判別することは不可能です。だからこそ、まず賢明な人々は、AIがつくり出す情報の『すべてが真実ではない』という距離感を持つことが大切です」

一方で、リー氏はAIが生成した情報の真偽を見破るテクノロジーが成立し得るとも述べている。そのためには、今後テクノロジーの進化を導く際に3つのことを意識するべきだという。リー氏の言葉に熱がこもる。
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編集=安井克至

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