今回、リー氏への単独インタビューの機会を得て、アカデミアとビジネス両方の視点から、今後のAIの展望や話題のChatGPTに対する見解などを語ってもらった。
SF的な想像力を働かせて未来を見る
リー氏の著書である『AI 2041』はSF(サイエンス・フィクション)的な視点から10話の物語に紡ぎ出した大作だ。読者を力強く引き込むチウファン氏によるストーリーと、その中に登場するAIにまつわるテクノロジーやトピックスについて1話ごとにリー氏が解説を加える形式で、これから約20年後に訪れる「人間とAIの未来」が軽快なテンポで描かれる。本書において、リー氏とチウファン氏がコラボレーションにより挑んだ「Sci-Fi(SF)プロトタイピング」とは、SF的な想像力を豊かに膨らませながら未来のシナリオを予測し、続いて未来を起点に今を振り返りながら考察を深める創作手法のことだ。
リー氏は、現在、人工知能(AI)に対して一部間違った理解が広がり、AIがとても難解なものであると信じ込み、恐れている人々が多くいることを懸念する。
「AIを正しく知ることが、AIがもたらす恩恵に預かり、AIの問題点を正しく把握するための近道になります。そのためにSFプロトタイピングの手法を採り、人間とAIの未来を誰にでもわかりやすく伝えることが最適と考えました」
名作と呼ばれるSF作品にはその世界に没入して、フィクションというフィルターを通して現実を振り返りながら、想像をたくましくできるおもしろさがある。『AI 2041』はその好例だ。