3. 世界情勢の変化により、総合商社の順位が大幅下落
毎年、就活生から人気を集める総合商社のランキングが、大幅にダウン。三菱商事は昨年の5位から今年31位、三井物産は昨年の8位から今年33位、伊藤忠商事は昨年の6位から今年72位へと大きく順位を下げた。ロシアによるウクライナ侵攻などの地政学的リスクによる業績への影響も考えられるが、竹内氏はもう一つの理由をあげた。「有名総合商社は入社の難易度が高く、選考を突破してくる新入社員には、トップレベルの大学を卒業した優秀な人材が多い。しかし年功序列の文化が残り、残業も多くなりがちで、身につくスキルが少ないと捉えられているため、離職率が高いんです。特にコンサル会社への転職が多く、人事の多くが頭を悩ませています。『どこでも通用するスキルを身につけたい』という最近の優秀な若者のニーズからは、外れてきていると感じます」
学生は知名度に縛られず企業選びを 企業はビジネスモデル変革を
続けて竹内氏は就職活動に臨む2024年卒業予定の学生とその親に向けて、次のように語りかけた。「学生が企業を選ぶ際、知名度や待遇などの分かりやすい条件にフォーカスしてしまうケースが多く見られます。今回、トップ10入りしたような一流企業はそうした条件をほぼクリアしていますが、当然ながらほとんどの学生には、そこに入社できるだけの仕事のスキルや経験がありません。
だったら、まずは新卒でスキルや経験が身につくような環境がある企業に就職し、自らの市場価値を上げていくことで、最終的に望む環境で働けるようにするという選択肢もあるわけです。そういう視点でも、会社選びをしてみていただきたいですね」
一方で、竹内氏は企業側にも根本的な取り組みが必要だと訴えた。
「今回、上位に入った企業に共通する点として、『競争優位性があり、高い付加価値を持った製品・サービスを提供する優れたビジネスモデル』を有していることがあげられます。ランキングでは外資系企業の台頭が目立ちましたが、彼らの多くはそのようなビジネスモデルを組み立てることに長けていると感じています。
日本企業も今、同じことを求められています。それは好待遇につながり、ひいては優秀な人材を獲得し、国際的な競争力の向上にもつながります。残業時間の削減や有給取得などの働き方改革も重要ですが、ビジネスモデルを付加価値の高いものに変革し、生産性を上げていくことこそが、真のホワイト化なのではないでしょうか」
竹内健登(たけうち・けんと)◎ 2016年、内定率100%の就活塾ホワイトアカデミーを創立。大学受験領域にも参入。東京大学工学部卒、元デロイトの人材戦略コンサルタント。造語「ホワイト企業」の名付け親。著書に『子供を一流ホワイト企業に内定させる方法』(日経BP)、『就活の教科書これさえあれば』(TAC出版)など。塾のYouTubeチャンネル「就活塾 ホワイトアカデミー」では、ホワイトな業界の紹介や大手企業の倍率、ESの添削を公開するなど塾の就活ノウハウを一部紹介している