茨城県にある湖・霞ヶ浦ではさまざまな魚が取れるが、そのなかでも漁獲量全国2位を誇るシラウオ漁に、いま面白い変革が起き始めている。シラウオの鮮度を人工知能(AI)で客観的に判定し、付加価値を高めてブランド化しようという試みだ。
シラウオは体調5〜10cmほどの高級魚で、新鮮であればあるほどその体は透き通っていて美しく、最近料亭や一部の一流料理人たちの間で人気が高まっているという。
水揚げ後すぐに異物を取り除く選別作業をしてそのまま出荷されるのだが、どうしても気温や水温、水揚げの方法などによって、漁ごとに鮮度にバラツキが出てしまう。しかも大量に水揚げされたシラウオのうち、どれが新鮮でどれがそうでないものかを選別することは非常に困難で、また全体の鮮度を定量化することも難しい。そのため、せっかく鮮度が高くよい状態のシラウオも、上値で金額設定する根拠付けが難しく、下値に合わせるかたちで取引せざるをえないことが課題となっていた。
その解決に乗り出したのが、AIを活用したさまざまなプロジェクトを進めているima(アイマ)という会社だ。茨城県つくば市在住である代表の三浦亜美が霞ヶ浦のシラウオ漁と出合い、もともと研究を進めていた画像認識やAIの技術をシラウオの鮮度の判別に活用できないかと考えたという。シラウオの鮮度をAIによって評価できるようになれば、霞ヶ浦で取れるシラウオの価値をもっと高め、販路拡大も狙えると、2021年12月から「霞ヶ浦シラウオ×AI」プロジェクトを茨城県行方(なめがた)市と立ち上げた。
目利きのベテラン漁師が「鮮度が高い」と判断したシラウオの画像と「鮮度が低い」と判断したシラウオの画像データを大量に集めてAIに学習させ、鮮度の高いシラウオを素早く判別するシステムを構築した。これによってシラウオの鮮度を客観的に把握できるようになり、例えば朝取れたシラウオをどの距離までなら鮮度を保ったまま届けることができるかという予測も可能になったという。