ふさわしい値段でブランド化
私も三浦氏にお願いして東京のマクアケオフィスで鮮度の高いシラウオとそうでないシラウオの食べ比べをさせてもらったのだが、歯応えのよさが雲泥の差であり、明らかに価値が異なることがわかった。もちろんAIで判別した通りの時間でその日の朝に取れたものをもってきてくれたわけだが、おかげで新鮮なシラウオに特有の「ポキポキ」という食感を東京でも味わうことができた。このAIによる判別システムを経た出荷はまだ正規の商流になってはいないようだが、鮮度の高い霞ヶ浦のシラウオがその価値に見合うフェアな価格で取引されるようになるのは時間の問題だろう。ゆくゆくはズワイガニにおける「五輝星(いつきぼし)」や寒ブリにおける「煌(きらめき)」のような最高級ブランドが、シラウオにもできるかもしれない。それがAIの活用などで透明性高く定量的に評価されることで、漁師側もモチベーションが高まり、産業のレベルアップと活性化につながっていくはずだ。
もちろんこのAIでの鮮度判別の仕組みは、シラウオ以外にも活用できる可能性が高い。ほかの種類の魚はもちろん、果物や野菜や肉など、鮮度によって価値が変わる食材において、活用の大きな広がりがありそうだ。この技術のように、「よいものはよい」と評価される仕組みが進化していくことで、つくり手や生産者側の創意工夫はより報われやすくなり、食文化の高まりにも寄与していくことだろう。
若干私の食いしん坊の願望もこもっているが、このフードテックの領域は今後も注目していきたい。
なかやま・りょうたろう◎マクアケ代表取締役社長。サイバーエージェントを経て2013年にマクアケを創業し、アタラシイものや体験の応援購入サービス「Makuake」をリリース。19年12月東証マザーズに上場した。