経済人と社会人は、境界線をなくして対話し進めていく
阿部: 小野寺さんが「この本は、大人だけでなく中学生にも読んでもらいたい」とおっしゃったのが印象的でした。僕達も「経済人か社会人か」ではなく、「経済人も社会人も」という視点で、この本を世の中に浸透させていければ、と思います。小野寺: 台湾のデジタル大臣、オードリー・タンさんも、この「経済人か社会人か」問題に対して「どちらも大切」と仰っていました。
海洋プラスチック問題を議論するなら、「プラスチックはダメだ」と批判するだけでなく、プラスチックストローを作ってきた会社の人と対話しながら、「じゃあどうする」を共に考え、物事を進めていく力が大切だと。
異なる文化や価値観があることを前提に、それを「抱きしめて」(笑)、既存のものを捉え直し育てていく力、ですね。
高津: それはまさに、企業と投資家と政府の関係性でも言えるかと。結局、対話が重要なのです。
阿部: 対話の場と、歩み寄る時の両者の気持ちが大切なのですね。
高津: 多くの人は、その気持ちを持っている。でも気がついていないか、気がついているけれど蓋をしているか、だと思います。
私自身、煌びやかなスイスのビジネススクールに行ったり、素朴な海士町(あまちょう)に行ったりしていますが、どちらを選ぶべきなのかを悩むのではなく、両方を大事にしなくてはと思っています。どちらかを選ぼうとするから、今ビジネスリーダーは悩んでいるわけです。
阿部: この対談内容は、折角の機会なので、多くの方に届けたいと願います。
小野寺: 数カ月後、アリスが来日するのが楽しみですね。
阿部: それでは、お話がエンドレスになりそうですが、こちらで対談をお開きにさせていただきます。次回は、リアル対面でお目にかかれたら嬉しいです。本日は、ありがとうございました!
高津 尚志(たかつ なおし)◎早稲田大学政治経済学部卒業。その後、フランスの経営大学院INSEADとESCPに学ぶ。帰国後、日本興業銀行やボストンコンサルティング・グループ、リクルートを経て、2010年からスイスに本社を構えるIMDに参画。著書に「ふたたび世界で勝つため「グローバルリーダーの条件」、訳書に「企業内学習入門—戦略なき人材育成を超えて」など。
小野寺 愛(おのでら あい)◎国際交流NGO「ピースボート」のスタッフとして地球を9周し、モンテッソーリ園「ピースボート子どもの家」を設立。近年は、一般社団法人「そっか」共同代表として自然学校の運営をする他、「日本スローフード協会」三浦半島支部代表を務め、世界的なムーブメントを日本に広める活動家としても活躍中。『スローフード宣言〜食べることは生きること』の翻訳を担当。
阿部 裕志(あべ ひろし)◎島根県隠岐諸島のひとつ、海士町(あまちょう)の出版社「海士の風」を創設し、代表に。過度な情報や一時的な流行に左右されず、純粋に出したい本を発売する稀有な出版社として業界を牽引する。1年間で出版する本は、厳選を重ねた3冊というこだわり。心から共感し、応援したい著書を応援する挑戦は、ずっと続いている。