6. Eコマースは今後も低所得者層へ拡大
中国政府が2021年の第14次5カ年計画で、農村部の活性化を優先的に強化することを表明したこともあり、中国におけるEコマースプラットフォームは、数年前から低層都市部にも拡大しつつあります。Eコマースデータ分析会社のEDTによると、2021年だけで中国の農村部のオンラインショッピング利用者は21%増加しています。・JD.comは2022年11月に開催された2022年度第3四半期決算説明会で、同社は引き続き農村部活性化の好循環を促進することを表明。
・中国の農村部をターゲットにした最初の大手Eコマース企業の1つであるPinduoduoは、ライブストリーミング(下画像参照)を含むさまざまなデジタル事業に関し、下層のマーチャントに対するトレーニングを提供し、オンライン化を支援し続けている。
Pinduoduoのライブ配信者 出典:Pinduoduo
2023年には、厳しいマクロ経済環境と都市部のEコマース市場の停滞の中で、代替収益源を求めて、これらのプラットフォームは下層部での広がりを続けることが予想されます。そして年を追うごとに、より多くのEコマース企業が地方市場に参入し始め、初期参入者が得た利益を享受しようとするでしょう。
7. デジタル化による実店舗の変革
スーパーマーケットやハイパーマーケットを含む多くの実店舗型小売業者は、迅速なデジタル化や既存のオンライン小売業者と競争するためのリソースがないため、パンデミック時には苦戦を強いられました。Statistaによると、ハイパーマーケットの2021年の成長率はほぼ横ばいで、スーパーマーケットと合わせても前年比2.6%の成長にとどまりました。現在、実店舗をもつ小売業者は、勝ち残るためのデジタル化の必要性を認識しているため、大手プラットフォームやサービスプロバイダーは、これらの小売業者を支援することによってもたらされる大きなビジネスチャンスを認識しています。例えば、JD.com傘下のオンデマンド小売サービスプロバイダーであるDadaは、Haibo Systemを通じてオープンプラットフォームモデルを運営し、実店舗のデジタル化の支援を行っています。
Haibo Systemは、マーケティング、在庫管理、会計照合、注文処理など、小売業者のさまざまな業務をプラットフォーム上で統合させることができます。小売業者はこれらの業務をデジタル化することで、重要なデータを取得し、十分な情報に基づいたビジネス上の意思決定を行うことが可能です。また、過去2年間の食料品分野の低成長を考慮し、Dadaはスーパーマーケットやハイパーマーケットに直接広告を出す試みも行っています(下の写真参照)。
このように、大手Eコマースプラットフォームやテクノロジー・サービスプロバイダーは、マクロ経済の不確実性が続く中、代替収益源を求めて、実店舗、特にスーパーマーケットやハイパーマーケットにデジタル化ツールを提供するようになると思われます。
オンライン広告のDadaのHaibo Systemのビジュアル映像 出典:企業ホームページ