「私は見られなければならない」 エリザベス女王が貫いた完璧なプレゼンス

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9月8日、エリザベス2世は、96歳でその生涯を閉じられた。在位は70年を超え、歴代最長期間、英国君主を務められた。

女王の遺した言葉の中で、忘れられないものがある。それは ”I have to be seen to be believed” 「私は、信じてもらうために見られなければならない」だ。

この言葉がいつ頃、どの状況で言われたのかは、相当調べたがみつけることができなかった。しかし、Sally Bedell Smith氏の著書『Elizabeth the Queen: The Life of a Modern Monarch(エリザベス・ザ・クイーン-近代君主の生涯)』 の中に、しっかりとその言葉が取り上げられている。それを翻訳し、以下に引用する。

“レセプションでは、女王は微笑みながら群衆の中を移動し、あまり多くを語らないように気を配っていた。プライベートでは闊達な彼女も、こういった場での発言は、まるで蒸気のように逃げていくように見えた。何十年も人前に出ているうちに、彼女はロールシャッハ・テストのように、何も語らず、他人の印象を重ね合わせるようになっていた。

その後のささやかな夕食会で、リチャード・ゴズニー氏は、彼女が「目に見えて衰えた様子はない。彼女は明らかに自分のペースを守る達人だ。目に見えないが、自分のエネルギーとアウトプットを適切にコントロールしているのだ」と指摘した。翌日の12時間のスケジュールのうち、4時間のダウンタイムがあり、その間に3部屋あるスイートルームで箱詰めをしたそうだ。

島を横断するとき、彼女は可能な限り歩き、ハミルトンの通りをオープンカーで走り、可能な限り車列を減速させた。数十年前に彼女が言ったように、「私は信じてもらうために見られなければならない」ことを承知で。道には推定2万人の人々が列をなし、場所によっては4重の列ができ、前回1994年の訪問時をはるかに上回る人出となった。この熱狂的な支持は、世論調査で何度も否決されたイワート・ブラウンの独立論への反撃と受け止められた”

「言葉をどれだけ重ねるよりも、自分の存在とそのあり方を見てもらうしか信じてもらう術はない」。これを実践し続けたのが、クイーン・エリザベス2世なのだ。以下エリザベス女王と呼ぶことにする。
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文=日野江都子

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