この点については今回の「欧州サーキュラーエコノミー政策・事例レポート2022」でも触れていますが、ある研究者が、EUが開発したサーキュラーエコノミー測定ツールを適用して測定した結果によると、EU加盟国のなかではかなりの「温度差」があることがわかっています(ドイツ・ベルギー・スペイン・オランダ・フランス・イタリアなどはサーキュラーエコノミー施策が比較的「高速」で進められており、残りの国々は「低速」と評価されることも)。逆にリサイクルなどの技術部門など、日本のほうが進んでいる分野もあります。
伊藤:実際に欧州で暮らしていると、サーキュラーエコノミーが完全に浸透しているとは言いがたいなと思うこともあります。例えばですが、ロンドンでは一人当たりのペットボトルの消費量は年間約175本(※2)。日本は約183本なので、若干ロンドンの方が少ないものの、大差はないとも捉えられます(※3)。英国では、牛肉やラム肉などの消費が生み出す環境負荷が問題にもなっていますが、経済性・栄養・調理の手間などを考えて、それらを進んで選ぶ人々ももちろんいます。所得の格差も大きい中、すべての人々がサーキュラーエコノミーを生活の最優先事項に位置付けるかどうかは、政策とはまた別の話になってくると思います。
Q. サーキュラーエコノミー推進のための環境教育はされているのでしょうか?
西崎:オランダでは小学校から環境教育が盛んに行われています。実際に気候変動に実情を知るだけでなく、ポジティブな変化を起こすことを促すのが特徴です。2019年には、2000人もの子どもたちがデン・ハーグに集まり、国に気候変動対策を迫るデモを行ったほどです。また、アムステルダムの小学校では、子どもたちのためのサーキュラーエコノミー教育の場かつ実験場の「Ecodam」のパイロットプロジェクトが行われ、今後市内東区に常設の拠点をつくる構想が進んでいます。
伊藤:英国では、2025年の9月から気候とサステナビリティに関するトピックが、中学校の「自然史」の科目に組み込まれることが決定しています。そしてこの決定で特徴的なのが、ただ机の上で勉強をするだけではなく、実際に現場に赴き、観察・記録・分析をすることがセットになっていることです。またスコットランドでは、Zero Waste ScotlandというNPO団体が、学校や教師に対して「サーキュラーエコノミー」に関するインプットの機会を提供するなど、地域単位でも環境教育が進められています。