ドイツ:柔軟な発想と、国と国民の生活を豊かにする迅速な実装
クリューガー量子:ドイツでは、教育研究省が発足させたイニシアチブ「Circular Economy Initiative Deutschland」がサーキュラーエコノミー移行に向けたロードマップを2021年に公表し、主要10分野における推奨事項を発表しました。これに先立つ2015年には、ドイツの産業の根幹である製造業の今後のあり方と世界における優位性を確立することを目的とし、「インダストリー4.0実現戦略」が発表され、政府が推進しています。インダストリー4.0をはじめとするデジタル分野とサーキュラーエコノミー製品で、ドイツは産業拠点としての地位・競争力・高品質の仕事などを確保できるとみられています。
ドイツのサーキュラーエコノミーの特徴は、産業の発展や国益だけではなく、サーキュラーエコノミーへの移行を通じて「人々の生活を真に豊かにする」という視点が大切にされ、働き続けやすい環境をつくる労働制度なども策定されていることです。生物多様性などを考慮した施策も進められています。
服装の自由も子どもに権利として認められており、制服がある学校はごくまれです。制服は、同じ制服への再利用が難しく、通常は焼却または埋め立てられています。サーキュラーエコノミーの「廃棄物を出さない設計」という概念のもと、今後は「制服を使用しない」といった発想を柔軟にすることも、サーキュラーエコノミー移行を促進していくのではないでしょうか。
こうした柔軟な発想と、国と国民の生活を豊かにすることを目指す法律の策定・実装の迅速さは、ドイツのサーキュラーエコノミー移行への大きな推進力となっています。
英国:政府・企業のアクションだけでなく、研究の分野からも欧州のサーキュラーエコノミー移行を後押し
伊藤恵:全英のサーキュラーエコノミーを推進する政策の一つが「Circular Economy Package」です。英国は2020年にEUを離脱しましたが、この政策の中には「EUを離脱しても、環境問題に関して世界をリードして取り組む野心は変わらない」という記述があります。そうした全国の政策に基づいて、イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドが、それぞれの地域での環境目標を設定しています。