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2022.09.24 11:30

在住者が見る、欧州のサーキュラーエコノミー最前線

世界中で巻き起こる物価高騰や資源枯渇、自然災害、貧困──新型コロナウイルスや、ロシアによるウクライナ侵攻により、これまで以上に私たちの暮らしは脅かされています。さまざまな課題を抱えながら、2050年には97億人へ増加すると予想されている世界人口に対し、限られた資源で私たちはどう生活していったら良いのでしょうか。

そうした中でいま、世界で注目されている概念が「サーキュラーエコノミー」です。2022年8月17日、欧州在住メンバーによる事業組織「ハーチ欧州」は、このたびサーキュラーエコノミー先端都市と呼ばれる欧州の政策や、オランダ・フランス・ドイツ・英国のユニークな最先端事例を解説したレポート第一弾「欧州サーキュラーエコノミー政策・事例レポート2022」を制作しました。

2022年8月23日には、このレポートの発売記念に、総勢250名以上の方に向けたオンラインイベントを開催。本記事では、そのイベントのハイライトをお届けします。欧州では、本当にサーキュラーエコノミーは進んでいるのでしょうか? 本記事後半では、イベント内では時間の関係で回答できなかった質問などにも触れています。

※ここからは、イベント登壇者の発言をお届けします。

EU:これまでとこれからのサーキュラーエコノミー政策・規制


藤原ゆかり:EUによるサーキュラーエコノミー政策の土台には、過去にEUが取り組んできた環境政策のもとで整備された廃棄物管理システムがあります。EUにおける同システムの構築は1970年に始まり、今日までその時々の必要性に対応しながらこれまで発展してきました。そして、サーキュラーエコノミー政策の策定により、廃棄物管理が同政策に一体化されることになります。しかし、サーキュラーエコノミー政策は、廃棄物管理だけにとどまらず、その焦点を生産過程や消費過程にも拡大していきます。

EUはサーキュラーエコノミー政策のもとで、多数の現行規制を改正し、同時に新たな規制も導入しており、その内容は全体的に強化されています。政策の対象は主にEU加盟国ですが、EU市場で事業を行うあらゆる国の企業が対象となるものも多く、そのため国際的に事業を展開する日本の企業も影響を受ける可能性があります。こうした企業にとっては早期の対応が必要となる場合があり、規制の動きを把握しておくことは非常に重要です。

サーキュラーエコノミー政策のもとでは、「製品のライフサイクル全体を取り扱う」という原則に基づき、関連規制の適用範囲が大きく拡大され、規制の対象となる製品も新たに追加されます。また、循環性を促進する観点から、製品の設計時点から耐久性・修理性・リサイクル性を考慮に入れることが前提となっていくため、今後産業界は多角的な対応を迫られることになります。
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文=Circular Economy Hub Editorial Team

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