私が暮らしているロンドンに関していうと、ロンドン市長とロンドン特別区のパートナーシップのもと組成された団体「ReLondon」が都市のサーキュラーエコノミー移行に取り組んでいます。ReLondonは、ビジネスのコンサルティングなどにとどまらず、市民が気軽に参加できる「古着のアップサイクルのワークショップ」や「自転車の修理ワークショップ」などを各地域で展開していることが特徴です。
Photo by Megumi
また、各大学が主導する「サーキュラーエコノミーセンター」は繊維、建設、化学、金属産業における廃棄物の再利用を念頭に、技術の開発や研究を進めています。芸術大学から総合大学まで、色々な大学が舵取りをしているのが特徴です。そして英国発の研究機関・エレン・マッカーサー財団は、2010年に設立されて以来、サーキュラーエコノミーに関する定義・手引き・指標を生み出し、世界中の自治体や企業のサーキュラーエコノミー移行に寄与してきました。
欧州では、本当にサーキュラーエコノミーは進んでいるのか?
※ここでは、イベント当日&事前質問で頂いたご質問を一部抜粋し、回答させていただきます(当日回答できなかったものを含む)。
Q. なぜ欧州では、サーキュラーエコノミーが進んでいるのでしょうか?
藤原:欧州のほうが進んでいると捉えられる理由の一つには、EUによるサーキュラーエコノミー政策の策定、関連規制の整備とそれに対応する企業の取り組みがあります。また、80年代にすでに他国に先駆けて廃棄物管理のインフラを構築した一部の国(ドイツやオーストリアなど)では、現在EUのサーキュラーエコノミーの土台となっている廃棄物管理・分別における人々の認識が非常に高く、環境に関する積極的な取り組みを目にする機会が多いことも、それに貢献しているように思われます。
ただ、これまでの廃棄物管理の概念とサーキュラーエコノミー原則のもとでのそれは異なっています。そのため必ずしも廃棄物管理の優等生=サーキュラーエコノミー牽引国とは言えないので、現実は複雑です。
外からだと欧州・EUをひとまとめに見てしまいがちですが、EUは27カ国から成り、欧州全体では英国やスイスなどEUに加盟していない国もあります。そして実際に、欧州各国のサーキュラリティを国別に比較してみると、2020年のサーキュラリティはオランダ(31%)が最も高く、ベルギー(23%)、フランス(22%)が続く一方で、最も低いルーマニアは1%、アイルランドとポルトガルはともに2%と、国によってかなり差があります(※1)。
欧州のなかでサーキュラーエコノミーが「進んでいる」とされているのは今回レポートでご紹介している国をはじめ、まだ一部です。また、これらの国の中でも、サーキュラーエコノミーの概念については、産業部門によって定義や捉え方が異なっている現状もあり、各国の取り組み状況を厳密に測定して比較するのは難しいのが現状です。