非可食バイオマス由来の糖を原料としたアジピン酸の開発は世界初と報告している。今後は、ナイロン66の重合試作、生産技術開発、市場調査などを進め、2030年を目途に実用化を目指す。
ナイロン66は、耐久性や強度、剛性に優れており、繊維や樹脂として長年使用されている一方、原料であるアジピン酸を従来の化学合成法で製造すると、温室効果ガスである一酸化二窒素（N2O）が発生する点を、同社は課題として捉えていた。
今回同社は、糖からアジピン酸中間体を生成する微生物を世界で初めて発見したことを発表。微生物内で、より効率的に合成が進むよう人工的に遺伝子を組み換える遺伝子工学技術や、合成に最適な微生物発酵経路の設計といった情報生命科学技術を活用し、微生物内の代謝経路を効率的なものに作り変えることに成功し、合成効率の飛躍的な向上を実現した。
また、精製の過程で中間体の濃縮に逆浸透分離膜（RO膜）を利用することで、RO膜を利用しない場合と比べ、より少ないエネルギーでの濃縮を実現。この方法で得られるバイオアジピン酸は、石油由来アジピン酸の製造工程で発生するN2Oを全く発生させないため、地球温暖化抑制への貢献が期待できる。
非可食バイオマス由来の糖からナイロン66までのプロセス全体図（出典 : 東レ）
同社は、作物残さなど食用化できない植物資源から糖を製造するプロセスの実現に向けた実証検討を行っている。今後、このプロセスから得られる糖をバイオアジピン酸の原料として使用することで、非可食バイオマスから化学品を製造するトータルサプライチェーンを構築し、持続可能な資源循環型社会の実現に貢献することを目指す。
なお、本成果の一部は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構（NEDO）助成業務「植物等の生物を用いた高機能品生産技術の開発」および「カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発」の下、国立研究開発法人産業技術総合研究所、国立研究開発法人理化学研究所との共同研究により得られたものである。
【プレスリリース】世界初 非可食バイオマスを原料とする糖からナイロン原料を創出－環境配慮型ナイロン66の実用化に向けたバイオアジピン酸の合成に成功－
※この記事は、2022年8月にリリースされたCircular Economy Hubからの転載です。
