ウォルマート、RFID導入の理由 「欲しいモノを、欲しいときに、欲しい場所で買えるように」

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米国Walmartでは9月から、アパレルに加え、ホーム&キッチン用品、浴室用品、寝具、家具、おもちゃ、自動車用品といったカテゴリーの商品にRFID(Radio Frequency Identification)が取り付けられると米Forbesが報じた

目的は、店舗における在庫データ精度の向上と報じられているが、この背景にはECサイトの高い利便性に対する危機感がある。

高まり続けるECサイトの利便性への対抗


ECサイトの利便性は疑いようがない。例えばAmazonのプライム会員であれば、多くの商品は送料無料で即日または翌日に配送されるし、返品・交換もスムーズだ。在庫の有無もすぐにわかるうえ、仮に欲しい商品の在庫がなくても口コミ機能などで代替商品を見つけることができる。多くの場合、買えるor買えないということが「確実」に分かるのだ。


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こうしたECサイトの利便性に対抗するため、実店舗を持つ小売チェーンはECと店舗を融合させるオムニチャネル化を急いでいる。

日本でも、ヨドバシカメラやニトリ、イオンなど、大手の小売チェーンを中心に、オンライン上で店舗の在庫有無を開示したり、オンラインで購入した商品を店舗で受け取るBOPIS(Buy Online Pick-up In Store)などのサービスを提供する企業が増えてきた。店舗に誘導することによる「ついで買い」も期待できるからだ。

オムニチャネル化を支えるリアルタイムの在庫データ


小売チェーンがオムニチャネルを運用する場合、ECサイトと店舗双方の在庫把握が必要になる。例えば先述のBOPISを提供するためには、消費者が購入したい商品が、今どこの店舗にいくつあるかを企業側が把握できていることが大前提だ。正確かつリアルタイムに近い在庫データを保有しているかどうかが重要になる。

しかし、店舗の在庫数を正確に把握するのは至難の技だ。筆者が聞いた中でも「オンラインで表示する在庫数は、実際よりも少なく表示している」という小売業の担当者は多い。この理由を聞いてみると、システム上に表示される店舗の在庫数が当てにならず、万が一「在庫あり」と表示していた商品の在庫がない場合には、クレームにつながってしまうからだという。

米国Mckinsey & Co.の調査によれば、36%の消費者が欠品を理由に、ひいきにしていた小売チェーンから別の小売チェーンに乗り換えた経験があるという。たしかに在庫数を少なく表示することで消費者の失望を免れることはできるかもしれないが、同時に機会損失となる。
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文=三澤 明希子

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