オランダ:「まずは始めてみる」からこそ進むサーキュラーエコノミー移行
西崎こずえ:オランダは、世界に先駆け、初めて国として2050年までにサーキュラーエコノミー実現することを目標として掲げました。それに同調する形でアムステルダム市も同様の目標と戦略を策定。さらにはコロナ禍の2020年、アムステルダム市はサーキュラーエコノミー戦略の中核としてドーナツ都市計画を加えることで、サプライチェーンでつながる他の国や地域、人や環境への影響までを見通したサーキュラーエコノミー移行を実現することを目標に据えました。
オランダでは、国が戦略とロードマップを明確にしているからこそ「まずは始めてみる」ことが可能になり、そしてそこからわかったことを広く共有し合うというアプローチが実を結びつつあります。
特にアムステルダム市では、サーキュラーエコノミー実現に向けた進捗やアクションポイント把握のための「サーキュラーエコノミーモニター」が2021年に公開されました。このツールにより、どの分野・どの工程で循環がうまくいっていないか知ることができます。
Photo by Kozue Nishizaki
アムステルダム市東区のアイブルグは6つの人工島からなる循環型開発区域で、政府・企業・住民が手を取り合い取り組みが進められています。さらに、アムステルダム市が旗を振り、ホテルを循環の重要な拠点と捉えて情報共有や連携を進めるサーキュラー・ホテルズ・リーダーズグループの取り組みも興味深い事例です。対話型・全員参加型のボトムアップの意思決定プロセスは、オランダのサーキュラーエコノミー移行を大きく後押ししていると言えるでしょう。
フランス:「自分が社会を変えられる」市民が声を上げることでつくる循環型社会
富山恵梨香:フランスは、サーキュラーエコノミー移行に向けたロードマップ「循環型経済実現のためのロードマップ2018」を国として公表しています。
他の欧州諸国と比較したフランスの廃棄物量の多さや、リサイクル率の低さが課題としてあることから、廃棄物に関する政策に力を入れています。たとえば、2022年1月より、世界で初めて洋服の廃棄が禁止になり、企業に対してリサイクルや寄付を義務化したことは日本でも話題になりました。
また、フランスはデモが頻繁に行われる国としても知られています。歴史的には、フランス革命が起きた国なので、自分たちが声を上げて「自由で平等な社会」を作ったという過去の経験から、「市民が社会を変えられる」という意識が強く根付いている国だと感じます。
ファッションブランドのサステナビリティをスコアで比較できるフランスのアプリ「Clear Fashion」では、自分の声を企業に伝えることができたり、市民による市民のための参加型予算からサーキュラーエコノミーに関する具体的なアイデアが実現していたりと、市民主体で社会が動いています。市民のアイデアと自治体、企業との連携によって、市民の生活を変えるアプローチがされているのがフランスの一つの特徴です。