今回は「絆徳経営(ばんとくけいえい)」のもうひとつの柱となる、「社員教育」についてお話したいと思います。顧客との絆づくりと社員との絆づくり。一見別ものと思われるかもしれませんが、やるべきことは同じです。お客さまに「よいこと」をして絆を結ぶように、社員に対しても「よいこと」をして絆を結ぶ。持続可能な経営を考えるうえで、非常に重要な要素となる、この「絆徳の人事」は、どのようなもので、何をすればよいのでしょうか?
経営者は、社員の給料を増やすことがゴール! と決めてしまおう。
社員に「よいこと」をするとは、ずばり、給料を増やし働きやすい環境を作ることです。この話をすると多くの経営者はビックリされますし、そんなことをしていては、経営が成り立たない、と言われます。ですが、これからの時代には、この視点がないと、人を採用することも、離職率をさげることも不可能です。
実際に、経営者は、「社員の給料を増やすこと」をゴールと考えてみてください。次に、「どうやったら給料が増えるか?」を社員に示すのですが、そのためには事前に「ルールを設定すること」です。
「△△ができるようになれば、給料が◯◯円になる」というルールの共有化を行うことで、皆が同じ方向に進むマインドセットが実現するわけです。つまり、会社が求めているパフォーマンス(業績、態度や実務能力など)と、社員が求めているもの(高い給料、評価や昇進などを含む)のベクトルをあわせて、「社員の給料があがる=会社の状態もよくなる」ように設計するのです。
このマインドセットにより、社内の格差が解消されるメリットも生まれます。格差社会のようなピラミッド型の組織から、中間層を増やす丸ダイヤ型へと近づいていく、これこそが私が推奨している「絆徳経営(ばんとくけいえい)」による人事制度なのです。
ここで、以前もお話したピラミッド型と丸ダイヤ型の構図について、思い返してみましょう。トップ層だけがエンジンをかけて部下を引っ張って走らせるピラミッド型は、先頭車両だけが燃料を積んで走る機関車のイメージ。
一方、丸ダイヤ型は、全車両が駆動力を持って走る新幹線のイメージです。新幹線のような丸ダイヤ型の会社は、社員一人一人が自己有用感を持って仕事に臨むことができるようになるので、社員の定着率が高まります。これからの時代は、確実に労働人口の減少が見込まれています。採用がより難しくなる時代だからこそ、今いるメンバーに活躍してもらい、会社に定着してもらうことが、人事におけるキーポイントとなってくるのです。