社員の嫌なことを取り除いて、社員の活躍&定着へ
絆徳流の人事システムで重要なことは、対立や衝突をなくし、絆を育みやすい土壌を作ることです。そのために人事で必要な5つの主要実務とは何でしょうか?それは、①採用、②教育、③配置、④評価、⑤出口の5つです。簡単に説明すれば、①求める人物像を言語化してから採用、②社員の成長を自動化する教育、③社員が定着し活躍する配置、④成長を実感させる評価制度、⑤離職にまつわる出口管理、です。
これらについて詳しくは『絆徳経営のすゝめ』を手に取って頂ければと思いますが、ここでは、この5つの主要実務を考える上で共通して課題となる、よく起きがちな「会社と社員の対立構造」についても考えてみましょう。
多くのケースで対立とは、「人の問題」に意識が向くと起きがちなものです。例えば「上司がこれをやってくれない」「Aさんはあんなことも出来ない」などというように。夫婦の間でも、相手の問題に意識が向くと、対立しがちです。
でも、住んでみたい家や家族旅行など、将来の夢やよい未来に意識が向くと、対立から離れることも可能となります。つまり、対立を解消するためには、「人以外のところに共通のゴールを定め、そこに向かって協力する未来図を描くこと」そして、そこにベクトルを合わせることが大切です。上司の個人的な価値観で部下を指導するのではなく、「会社がやって欲しいのは、こういうことなのだ」と会社の方針を提示し、ヴィジョンやゴール達成に向けて、一緒に考えてみるといったことが効果的です。
とはいえ、部下の願望とずれたヴィジョンになっていたり、部下が感じている問題を無視して、批判の矛先が会社に向いてしまうと「自分にこの会社は合わないな」と、「会社対社員」の対立構造が生まれてしまいます。人事の流動化が進んでいる現在、「この会社は合わない」と思われたら、社員がすぐに辞めてしまうので、ベクトルを合わせることに加えて、「社員が嫌なことを取り除く」のが効果的です。
長時間労働が嫌なら「わがままを言うな」ではなく「じゃあ時短勤務にしようか? 労働条件が変わるから給料が下がるけど、それでもいいかな?」とニュートラルに解決策を示してあげるのです。それは特別扱いではなく、前述した人事システムの明確化同様、「フルタイムの場合は、こう。時短勤務なら、こう。出来高制の場合は、こう」と条件を決めておき、本人に選択してもらう。それによって、無駄な対立構造が回避でき、かつ社員が定着し、活躍してくれる確率がぐっと高まります。
また、ダイバーシティの推進として、「ジェンダーへの平等」などという多様化テーマが挙げられます。ドラッカー的に言えば「弱みを意味のないものにして、強みを生かす」ことを意味します。この考え方を広げていくと、例えば、「人と話すのが苦手」という社員には「あいつは使えない奴だ」と切り捨てるのではなく、人と話すのが苦手でも活躍できる方法を探してあげる。それは、強い人が弱い人を救ってあげることでもあります。
今までの社会では、強い人だけがどんどん上へいき、それ以外の人は底辺に取り残されてきましたが、持続可能な経営をしたいなら、その概念は諸悪の根源。そこで、どんな個性の人でも活躍できる場所を見つけてあげる構図を作り、ピラミッド型の組織から脱却することが求められるのです。