ビジネス

2022.09.15

持続可能な経営の柱となる、絆徳流「社員教育」とは?

ラーニングエッジ代表取締役・清水康一朗


パフォーマンスとコアバリューのバランスを重視せよ


雇用した社員の評価は、経営者にとって切実な問題でもありますが、ここで世界最大の総合電機メーカーであるゼネラル・エレクトリック社(GE社)の人事制度についてお話しましょう。

現在は制度が変わってしまいましたが、同社は長年にわたって、パフォーマンスとコアバリュー(マインドセット)の両面から「9ブロック」と呼ばれるマトリックス図を使って、社員評価をしてきました。パフォーマンスとは、「売上や実績といった目に見える成果」のことであり、コアバリューとは、「仕事の価値観、仕事への意欲や勤務態度や理念への共感度」を意味します。

この中で、最も高い評価を得る社員は、言うまでもなく、パフォーマンスもコアバリューも高い層。つまり、「意欲的に働き、売上も高い社員」です。しかし、興味深いことに、最も評価されない社員は、「パフォーマンスとコアバリューが低い社員」ではなく、「営業成績は良いが、性格や勤務態度に難があって、人を馬鹿にしたり会社の方針に従わないタイプの社員」だったことです。

そのような社員は、パフォーマンスが高い分、影響力も強いので、放置しておくと社内の絆がどんどん分断されてしまいます。そこで、GE社がリストラをする時には、その層がターゲットになったわけです。

コアバリューや理念への共感を軽視してパフォーマンスだけで社員評価を行う会社は、「絆徳経営(ばんとくけいえい)」の視点では、非常に危険です。このことにいち早く気がついて成功したのが、中古車販売のIDOM(ガリバーインターナショナル)。業務に必要な知識だけでなく、「企業理念や組織風土の理解」についての教育に力を注ぎ、「営業実績・顧客満足度・業務への取り組み姿勢」を総合的に評価する人事制度を導入した結果、わずか数年で社員数4000人の企業へと急成長を遂げたのです。

先輩が後輩を育てる「社員教育」の仕組み


では、具体的な「社員教育」ですが、社長や部長など、一部の人だけが教育を担うのではなく、社員が育ってきたら、なるべく早い段階で部下を持たせて部下の教育を担わせることが大切です。私が考える「絆徳経営(ばんとくけいえい)」流の「教育の組織化モデル」を8つのステップでご紹介しましょう。



ステップ1では、「モデレーター(司会者)」のスキルを上げること。会議の司会進行は、中堅が担当しがちですが、小さなグループであれば、新入社員に任せることで、会議を盛り上げたり発言を促す訓練になります。次に、ステップ2は、議論の方向性を持ち、一定の方向に導く役割となる「ファシリテーター(促進者)」です。具体的には、脱線した話題を戻したり、「結論はこうですね」と話をまとめるスキル。このスキルが高まると、「まとめる力」が身につくので、部下のキャリア相談に乗る際にも役立ちます。

そして、ステップ3では、「ティーチャー(先生)」。多くの会社では、モデレーターやファシリテーターを経験させずに、いきなりティーチャーをやらせようとして失敗します。そこで、会話を盛り上げ→議論をまとめるコミュニケーション能力を持ったうえで→部下に教える。この流れが大切になるのです。
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文=中村麻美

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