ビジネス

2022.05.12 07:30

議事録のレベルでスキルがばれる。ビジコミュに必須の3つのアプローチ


<Attention!>

私が上司の立場なら、まず知りたいのは「部下が転職したいと思った理由」と「転職によって得たいもの」です。

単刀直入に聞いて本心を語ってくれるとは限りません。私なら自分自身の経験談を語ることからはじめるでしょう。過去に自分が転職を考えたときの状況や思いを率直に伝えることによって、私と部下の間に共通の価値観があることを感じてほしいからです。

1:エートス/人柄を活かした説得

その上でなるべく相手の言葉を否定せず、ときには自らの失敗談やユーモアを交えながら、コミュニケーションを図るでしょう。

2:ロゴス/条理に訴える説得

コミュニケーションの過程で、転職を望むようになった背景や理由、転職で得たいものが見えてきたら、それを踏まえ、転職せずとも願いを叶える手段や方法があること具体的に示し翻意を促します。

3:パトス/情熱による説得

最後に試みるのが感情へのアプローチです。必要に応じて相手の怒りや悲しみを刺激する話をしたり、場合によっては、組織への忠誠心や個人的な欲望、願望を煽る言葉をかけたりすることもあるでしょう。部下が尊敬する人物の振る舞いや考え方などを引き合いに出し、その人物を模倣するよう仕向けることもあるかも知れません。


こうした取り組みを意識し、順序に沿って行うだけでも説得する力は大いに高まります。さらに説得する技術に磨きをかけるのであれば、ロールプレイを通じて自ら「説得される側」に回る経験をするのがお勧めです。

上司役に加え、部下役であるあなたと上司役の人物それぞれがどんな背景を持った人物なのか、設定を考える人が必要になりますが、やってみる価値はあります。

あなたは、自分にあてがわれた設定を踏まえ、上司役の人物から転職を思いとどまるよう説得を受けるのです。上司の慰留に応じる気持ちになったか、それとも転職の意思を貫くことができたかは、それほど大きな問題ではありません。むしろ大事なのは結果が出た後です。

上司役、部下役それぞれの設定をオープンにし、お互いの立場から説得の過程で感じたこと、気持ちの変化について話してみてください。

驚くほど相手の発言の意図や気持ちを汲み取れていなかったり、想像以上に自分の思いが伝わっていなかったりしたことに気付くでしょう。そうした気付きが、コミュニケーションの質や説得力を高めるきっかけになるのです。

「日本語」「論理」「コミュニケーション」を鍛えることは、人間に対する見識や理解を深めることに通じます。それはやがて、より高いポジションで大きな責任を担う際の優れた後ろ盾になってくれるはずです。まずは自分が所属するチームでできることからはじめてみてください。その努力はいずれ目に見える成果になってきっと返ってくるでしょう。


【連載】今までにないアプローチでデジタルを理解する

#1:戦争論もドラッカーも古くない。デジタル時代こそ古典ビジネス論へ
#2:何かご一緒できたら──は無用。日本企業はスタートアップを正しく評価せよ
#3:ビジネスプラットフォームに活路? ならば肝に銘じる4つのポイント
#4:グローバルジャイアントが日本に生まれない、宗教の行動様式という新視点
#5:アワセとソロイ? 日本人の精神性が、ビジネスで弱点ではない理由
#6:日本が世界に勝つ「独自性の市場」は、スピードでもスケールでもない
#7:中堅幹部は石田三成に学べ。現代に通じる日本的リーダーシップ論
#8:コンサルタントが実践する、成果につながるビジネススキルの磨き方
#9:本記事

中村氏の写真

中村健太郎◎アクセンチュア ビジネス コンサルティング本部 通信・メディア・ハイテク アジア太平洋・アフリカ・中東・トルコ地区統括 兼 航空飛行・防衛産業 日本統括 マネジング・ディレクター。フューチャーアーキテクト、ローランド・ベルガー、そしてボストンコンサルティンググループを経て、2016年にアクセンチュアへ参画。全社成長戦略、新規事業創造、デジタル、組織・人材戦略、M&A戦略、等の領域において、幅広い業界のコンサルティングに従事。

文=中村健太郎(アクセンチュア)

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事