蓋然性の高い事実を積み重ねる演繹法的なアプローチを取る三段論法は、シンプルでありながら説得力のあるビジネス文書を書く上でも有効なフレームワークといえます。
大前提、小前提、結論までの流れが独りよがりになっていないかよく見返し、推敲を重ねれば、おのずと文書でも口頭でも論理的な主張を展開できるようになるはずです。
コミュニケーションは3つの角度からアプローチすべし
そもそも日本語と論理を磨くのはビジネススキルを高めるためですが、究極の目的は自らの主張や意思を過不足なく伝え、他者の行動変容を促すためとも言えます。
ただ難しいのは、一分の隙もない理路整然とした日本語で説得したからといって、相手が望むように動いてくれるかどうかは別問題だということ。聞く耳を持ってもらえなかったり、反発されたりしてしまうとすれば、それはおそらく伝えるべき相手の気持ちや考えに寄り添いきれていないからでしょう。
そんなときは、以下のプロセスを意識しながら働きかけると、相手の気持ちを解きほぐし行動変容を促す確率を高められます。
●説得に効くコミュニケーションの種類と働きかけの順序
─── 使用する順番 ───
語り手の人柄による説得
・人格、評判、聞き手からの信頼など・アリストテレスは、3要素の中で最も重要であると語った
論理の力による説得
・単に論理的であるだけでなく、聞き手の考えを利用することがポイント感情の動きによる説得
・まずは聞き手の感情に関心を示す・その上で、自分の意図した行動につながるように聞き手の気分を変える
作成:アクセンチュア
ここで、次の問をご覧ください。あなたならエートス、ロゴス、パトスを踏まえ、退職の決意を固めた部下をどのような振る舞いや言葉で慰留するでしょうか。
●コミュニケーションの初歩的な例題
<Q3>実際にあなたの大切な部下が退職すると連絡してきたことを想定してください。それを阻止するために、あなたは何を考え、どのように振る舞うべきでしょうか? エートス、ロゴス、パトスの観点から検討してください。
<Answer>
エートス:相手と自分が同じ価値観をもっていることをどのように伝えるか?
ロゴス:相手の主張の中で、自分との共通認識に置き換えられそうなポイントをどう抽出するか?
パトス:相手のどの感情(怒り、忠誠心、模倣、欲望)を煽るべきか? そのために何を伝えるのか?