「共感力」に関する5つの誤解

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「共感力」は今はやりの言葉で、多くの人が耳にしたり、話題にしたり、自分の共感力の高さを示そうとしたりしている。

共感力が注目されることは、社会全体にとって良いことだが、一方で共感力に関する誤解も生まれている。以下に、自分の共感力を高める上で障害となるような5つの誤解を紹介する。

1. 共感力はつかみどころがないスキルではない


共感力は、「なくても良いけどあったらうれしい」ソフトスキルではない。人々やビジネス、組織にとってさまざまな良い効果をもたらす重要なスキルだ。共感により、心の健康やイノベーション、エンゲージメント、人材保持、インクルーシビティ(包摂性)、ワークライフバランス、協力が促されることが、各種調査により示されてきた。

共感はかつて、ビジネスには不要な感傷的なものだとみなされていたが、共感は確固たる結果をもたらすことがデータで示されている。

2. 共感は責任感の欠如につながるわけではない


管理職の中には、部下に対し共感を示したいものの、そうすると部下や組織全体が自分の責務を果たさなくなるのではと懸念する人もいる。部下に優しく、理解があるリーダーはパフォーマンスの低下を招き、会社の業績を下げるのではないかという不安だ。だが共感はむしろ、部下の責任感向上につながることが多い。リーダーが共感を示すと、部下はより熱心に仕事に取り組むようになるのだ。

それに、人は責任を与えられたいと思うものだ。リーダーが明確な期待値を設定し、部下を信じることで、その人を評価しているというメッセージを送れる。人は自分が重要だと思いたいもので、自分の才能やスキルを役立てたいと強く願っている。

責任を与えることは悪いことではなく、部下の貢献をリーダーやチームが評価していることを伝える良い方法だ。優秀なリーダーは部下の得意分野を理解し、最高の結果を出して会社の成功に貢献できる環境を作るものだ。共感と責任感は密接に関連している。

3. 共感力はリーダーだけのものではない


共感力はリーダーにとって欠かせないスキルだが、リーダーに必要なスキルはそれだけではない。また、共感力はリーダーだけが持つべきスキルでもない。共感力が組織内で広まり、あらゆる階層の人が全ての部署やチームで共感を示せるようになると、非常に強い力となる。

人々が、自分は周りから理解・尊重され、気遣ってもらっていると感じると、共感の文化が醸成される。多様な視点が評価され、人々が互いを評価する文化を作ることを目指そう。間違いを犯すことが許され、人々が一緒に学び、成功できるような環境だ。人はこうした会社で働きたがるもので、離職を考えることはないだろう。
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編集=遠藤宗生

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