──お二人の今後の展望は。
唐沢:ビーガンレザーを含む「合成皮革」のマーケットはこの5年ほどで急速に拡大し、現在は世界で約8兆円規模にまで拡大しています。今後も伸びていくと予想されています。
コロナ禍においては、衛生面でも注目が集まりました。動物性よりも合成皮革の方が、抗菌力が高いからです。
一方で懸念しているのは、日本の合皮メーカーが衰退していること。現在は中国のメーカーに勢いがあり、設備投資も盛んで、品質も日本製と比べて見劣りしていません。
そんな中でも、日本で植物由来のレザーを開発しようという動きがあります。僕たちも将来的には日本の素材を使った商品を世界で販売していきたいと思っているので、日本の合皮メーカーと話を進めています。
それも、これまでのようにアップサイクリングという形ではなく、石油は一切使用せずに植物性由来の樹脂だけで、土に還る商品を作る試みです。
今は「販売して終わり」という経済モデルが主流ですが、あえて数年で朽ちてしまう商品を作って循環させるのも面白いなと思っています。商品を回収してコンポスト化し、その土で野菜を作り、その野菜を飲食店に届ける。そんな循環型のビジネスモデルです。
渡辺:動物性のレザーを扱う企業としては、日本のレザー市場は縮小傾向にあると考えています。
ただ、害獣として捕獲される鹿が増えているので、革の供給は増えているんです。だからこそプレイヤーも増えてきています。僕のところにも若者から年配の方まで、「ジビエレザーをやりたい」と話を聞きに来られる方がたくさんいらっしゃいます。
こうした動きがある中で、僕は当面、「鹿の利用率向上」に向けて集中して取り組んでいくつもりです。
鹿はポテンシャルに溢れている動物で、レザーや食用肉だけでなく、サプリメントやドックフード、アクセサリーや家具にも加工されています。アイデア次第でビジネスは無限の可能性があります。
将来的には、リソース豊富な大企業と鹿を組み合わせる「鹿の企画屋」になりたいな、なんて考えています。