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2022.04.26

「レザー」で革命を起こす。アップルレザー x 鹿レザー 起業家対談

ディアベリー代表の渡辺洋平(左)とLOVST TOKYO代表の唐沢海斗(右)


──渡辺さんも大学でアントレプレナーシップを専攻していますね。

渡辺:そうです。ただ、僕のきっかけは唐沢さんとは違って、「お金」なんです(笑)

父親が「1円たりとも無駄にするな」というケチな性格で。その影響で、僕自身もお金に執着する人生を歩んできました。高校の頃から株式投資を始めて資金をつくり、大学になったらビジネスでお金を増やそうという考えで、経営学部を選びました。

入学後は様々な事業に挑戦しました。ピラティスのポータルサイトや旅行代理店を立ち上げた後、プログラミングを独学で習得して飲食店向けの顔認識による顧客分析サービスなども手掛けました。

ところが、どれもそう簡単にはいかなくて。「自分は続けられない人間なんだ」「何のために生きているんだ」となどと、落ち込んだこともありました。



転機となったのは、祖父の死でした。自分にとってすごく大きな悲しみで、それを乗り超えられたのは、「祖父の遺伝子の4分の1が、自分の中に残っている」と思えたからでした。

この経験から、命をつないでいくことの大切さを感じ、それからは「自分の孫の世代に向けて、より良い世界を作ること」をテーマに掲げています。

そして、紆余曲折を経て行き着いたのが、地元の北海道で問題になっている鹿の獣害。全国では個体数管理という政策のもと、毎年60万頭もの鹿が捕獲されているんです。ただ、そのほとんどが焼却処分されていて、活用されているのは約1割。僕はこの事実に衝撃を受けました。

捕獲された鹿の革をレザーグッズに生まれ変わらせることで、人間の都合で終わらせてしまった命にも感謝し、責任をもって長く愛したい。そんな思いから、2021年に起業しました。

鹿の活用法として「食用」という選択肢もありますが、利用が進まず廃棄に回されがちな「鹿レザー」に着目しました。

財布やがま口ポーチを展開しているのですが、手触りが柔らかいレザーで、野生の鹿ならではの傷も楽しんでいただける商品になっています。こうした傷は、鹿の命の「軌跡」と命が生まれ変わる「奇跡」をかけて、「キセキ」と呼んでいます。


自然界で生活する中で付いた傷。商品によって違った味が出ている

唐沢:話を聞いていて思ったのですが、僕らの共通点は、「エゴを超越した目標設定」にありそうですね。起業の目的意識が自分ではなく“次世代”に移ったからこそ、長く事業を続けることができているのかなと。
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文=小谷紘友 取材・編集=田中友梨 撮影=山田大輔

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