スタートアップの聖地・シリコンバレーで経験を積んだ30歳の唐沢は、リンゴ由来のビーガンレザーを活用したトートバッグやリュックサックを販売するブランド「LOVST TOKYO」を2018年に起業。
一方、自然豊かな北海道の大地で育った20歳の渡辺は、横浜国立大学に在学しながら、「鹿の廃棄ゼロ」を目指し、害獣として捕獲された鹿の革を活用した財布などを扱う「ディアベリー」を2021年4月に立ち上げた。
植物性・動物性と扱う素材は違えども、目指す世界に共通点のある2人に、事業への想いや展望を聞いた。
──起業家を目指したきっかけは。
唐沢:僕は以前から起業に興味があり、米国の州立大学でアントレプレナーシップを専攻していました。ただ、当時は何の事業で起業するかについては、まったくイメージしていませんでした。
転機になったのが、大学卒業後に就職した人材派遣企業で、シリコンバレーにあるサンノゼ支店に配属されたこと。ここでBtoBの法人営業をしていたのですが、AppleやFacebook(現Meta)など名だたる企業に尋ねる機会があり、起業への熱量がどんどんと強まってきました。
マーク・ザッカーバーグが2017年のハーバード大学の卒業式で行ったスピーチにも刺激を受けました。特に印象的だったのが、「ミレニアル世代やZ世代は、人々が本質的な目的、つまりパーパスを持てるようなサービスを生み出すことこそが重要だ」という話。
まさにその通りだと感じました。そして、僕にとって自己実現以上に価値のあるサービスは何かと原体験に戻って考えたとき、思い浮かんだのが“ビーガン”でした。動物や環境のためでできる選択は、自分の存在以上の価値を感じられるパーパスになりえるからです。
渡辺:唐沢さんは元々ビーガンだったんですか?
唐沢:いえ、違います。学生時代にビーガンの方とお付き合いをしたことがあっただけです。それも、食事の際のお店選びなど面倒なことが多かったので、ビーガンに対する印象は最悪でした。
ただ、サンノゼ周辺ではビーガン食を扱う店が多く、人々の考えもかなり柔軟で、そういう価値観に触れるうちに、自分はかなり保守的だったなと気が付きました。
そこで、日本でもビーガンのような価値観を広めることで、多様な生き方の選択肢を増やしたいと考えました。食が中心のビーガンを、よりポップなイメージで伝えようと、ビーガンファッションのブティック事業を立ち上げようと決め、2018年の夏にビザが切れて帰国。すぐに動き始め、秋に起業しました。