こうした日本人の特性は、圧倒的な成長を誇る米国や中国との比較において、日本人の弱点としてやり玉に挙げられることが少なくありません。しかしこれらは本当に致命的な弱点なのでしょうか。筆者はそうは思いません。日本が誇るトヨタ自動車、グローバルでのシェアは約10%ですが、Uberなどライドシェアドライバー間でのトヨタ車のシェアは40%を超えると言われております。デジタル時代の象徴とも言えるライドシェアにて、その耐久性が評価されトヨタ車が選ばれている。これはまさに日本人の勤勉さが生んだ強さだと考えます。
弱点とされる特性を克服してライバルと同じ土俵で闘うか。DNAに刻み込まれた我々の独自性をビジネスに転化しそれが強みとなる新たな市場を創るか。いまわれわれの前には2つの道が開けています。
次回は今回の論考を踏まえ、米国発のグローバルジャイアントには真似できない日本企業のならではの〝勝ち筋〟を示します。
※主な参考文献
◎ 山本七平著:「日本人とユダヤ人」(角川書店)、「『空気』の研究」(文藝春秋)、「日本資本主義の精神」(PHP研究所)、◎ 小室直樹著:「日本教の社会学」(ビジネス社)、◎松岡正剛著:「連塾方法日本」(春秋社)、◎内田樹・中沢新一著:「日本の文脈」(角川書店)ほか。
【連載】今までにないアプローチでデジタルを理解する
#1:戦争論もドラッカーも古くない。デジタル時代こそ古典ビジネス論へ#2:何かご一緒できたら──は無用。日本企業はスタートアップを正しく評価せよ
#3:ビジネスプラットフォームに活路? ならば肝に銘じる4つのポイント
#4:グローバルジャイアントが日本に生まれない、宗教の行動様式という新視点
#5:アワセとソロイ? 日本人の精神性が、ビジネスで弱点ではない理由
中村健太郎◎アクセンチュア ビジネス コンサルティング本部 通信・メディア・ハイテク アジア太平洋・アフリカ・中東・トルコ地区統括 兼 航空飛行・防衛産業 日本統括 マネジング・ディレクター。フューチャーアーキテクト、ローランド・ベルガー、そしてボストンコンサルティンググループを経て、2016年にアクセンチュアへ参画。全社成長戦略、新規事業創造、デジタル、組織・人材戦略、M&A戦略、等の領域において、幅広い業界のコンサルティングに従事。