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NuZee Inc.最高経営責任者の東田真輝

日本で当たり前となっているサービスや商品。それが海外で受け入れられるためには、単純な移植では難しい。その国や地域を理解しフィットさせることで初めて成功が見えてくるのだ。

奇抜な発想ではない。売れるものを、売れるように導いた。


「起業当時から上場は頭に描いていました」

こう語るのは、米テキサス州に本社を置く「NuZee Inc.(ニュージー)」社長兼最高経営責任者の東田真輝だ。日本生まれのドリップバッグの受諾生産販売で米国の巨大コーヒー市場に挑み、2016年の事業立ち上げから4年で年商140万ドルまでに成長。2020年には言葉の通りナスダックCapital Marketで上場を達成した。

米で起業した日本人が上場を果たすのは稀有な例であり、加えて上場=テック業界という印象が強い昨今の潮流とは対象的な食品事業。ここに到達する道のりは簡単ではなかった。

NuZeeは、東田が渡米後に起業し手がけたニュージーランドのミネラルウォーターの輸入販売事業、そして機能性コーヒーの製造販売といった2度の事業転換を経て、現在のドリップバッグ事業に至る。この軌道修正が成功した要因について、東田は「投資家の反応が事業判断に非常に役にった」と話す。

出資者に対しての事業計画は何度も練り直し、投資家の反応が良ければ勝算があり、逆に反応が悪ければ計画を練り直すか白紙に戻す。この繰り返しがビジネスの精度を上げていったという。ただ、ドリップバッグ事業もその初手は厳しいものだった。

「紙のドリップバッグは道具を使わず簡単に淹れられて、ゴミも出ない。米国にはなかった発想でこれは行けると思って始めたのはいいのですが、なぜか売上につながらない」。事業開始から2、3年は、営業回りと展示会への出展で試飲会をする、の繰り返し。グレート!ワンダフル!と反応はいいが、受注に至らない。

壁となったのは、人脈と、企業としての信用不足。米国ビジネスで重視されるそれが当時の東田にはなかった。企業に売り込みをしても門前払いされる状況では資金繰りも窮する状況だった。東田は「手元の資金だけでは到底持たなかった」と振り返る。起業の際に掲げた上場という目標のための資金も取り崩し、何とか会社を存続させ続けた。

出資者のためにも撤退の文字はない。東田は基本に立ち返る発想で問題に対処していく。「信用がないから売れない。信用がなければ作ればいい」。カリフォルニアの自社工場に米国食品強化安全法「食品安全・品質管理規格(SQFレベル2)」認証を取得し、オーガニック、フェアトレード、コーシャー、ハラムと、相次いで認証を取得していった。「名もなく信用のない会社」だったNuZeeは少しずつ顧客からの評価が見直されるようになり、営業網は拡大する。

文=中沢弘子 写真=市瀬真以

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