デジタルをテコとした成長戦略

人々が求める幸せや価値観は多様です。しかしそれらは健康があってこそではないでしょうか。また、高齢化が進む日本では国民の健康をいかに守るかが喫緊の課題となっています。

こうした課題の解決にテクノロジーを活用し、健康問題の解決に限らず市民の利便性向上や充実した生活を実現するため、国内外の都市でスマートシティの取り組みが進んでいます。

本連載は2021年現在のスマートシティについて大局的に解説しつつ、国内外の事例を交えて日本の未来の新しい暮らしについて紹介していきます。

スマートシティの基本は市民中心


スマートシティは人(市民)中心で考え、市民生活に関わる幅広い分野をつなぐことで、暮らしやすく働きやすい場所を実現し、末長く住み続けたい街を形作っていく総合的・横断的な取り組みです。ヘルスケア、教育、防災、観光や各産業からエネルギーまで、その分野は多岐にわたります。

たとえば、病気や怪我で通院する際、受付や会計のために「待合室で長時間待つ」のは日常的な光景でした。それが診察のみの時間で帰宅できるようになればどうでしょうか。まさに診療に関する体験の劇的変化です。

病気治療ではなくデジタルデバイスを活用した予防医療を中心とすることで健康寿命を延ばせるでしょう。日本の医療制度は世界に誇れる仕組みですが、医療費の増大による限界が叫ばれて久しいです。健康寿命が長くなることは、市民個人の生活のみならず、国や自治体にとっても大きなメリットがあります。

また、防災は日本において市民一人ひとりの人命に直結する重要なテーマです。予測不可能な災害が発生した際、自宅にいるとは限りません。GPS内蔵スマートフォンなどによる位置情報を用いて、現在地を起点として避難所へ的確に誘導するような取り組みもスマートシティのカバー範囲の一つです。

会津若松がつくりあげる体験価値


そうした取り組みが実践され、市民の利用や実証実験が進んでいる自治体の一つが福島県の会津若松市です。

同市のスマートシティの基本的な考え方は「市民オプトインを起点とした三方よしの地域社会」。市民の主体的な同意や参画意識を高めつつ、利用者の同意を得た上でデータの利活用を地域・行政・企業が行うことで、その恩恵が市民に還元されるモデルです。


出典:会津若松市

会津若松市では、バーチャルホスピタル会津若松を標榜し、地域全体を一元的に健康管理・医療・介護を担う一つのバーチャル機関と見立てて、患者と医師双方のエクスペリエンス(体験価値)最適化を目指す取り組みを始めています。市民に寄り添う医療体制を実現するために、基盤としてライフステージ一貫型PHR(パーソナルヘルスレコード)を構築し、地域全体で市民の健康を推進する体制の具現化を目指すものです。その中心に位置するキーワードがエクスペリエンスとスマートシティです。

文=藤井篤之(アクセンチュア)

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