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2021.05.22 08:30

ストレスフリーの未来医療は始まっている──機能するスマートシティ


医療分野の体験における課題と改善アプローチ


そもそも日本の医療の大部分の課題は、「市民・患者中心のサービスデザインになっていない」という治療プロセス・体験の問題と、「アウトカム(治療成果)を最大化させる設計になっていない」「医療とケアが断片化」というアウトカムの問題に集約されます。これらを解消するのが今回の取り組みです。
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たとえば、医療分野における課題と改善アプローチとしては次のようなパターンがあります。

1. 治療プロセスや体験が、市民(患者)中心のサービスデザインになっていない


●課題
患者は、自身の体調不良で不安が大きい中、医療の専門知識もなく、どのような対処が最適なのか、そもそも医者にかかる必要があるのか市販の薬でよいのか、どの病院・診療所のどの先生にかかればよいのか、わかりません。さらに、医者に行くことになっても、体調不良の中、他の患者からの感染の恐れもある中、病院・診療所への移動、待ち時間は大きな負担です。

一方、医療機関の側からしても、来院するまで、どんな患者が、どのくらいの緊急度で、いつ、どのくらい来るのか見通しが立てづらい中、限られた医療従事者・医療資源で対応せざるを得ない状況となっています。
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●改善アプローチ
患者と医師双方のエクスペリエンス最適化が必要です。患者には新しい体験のデザインとして、治療そのものだけではなく、治療を受けるまでの過程をふくめ、負担を低減する取り組みが必要です。

例えば、普段の健康管理を、後述するPHRのデータやデジタルデバイスのデータを用いて、アプリケーションを通じて行い、アプリケーションからのリスクアラートなども参考にしながら、医療従事者に簡単にチャットや音声で相談できます。相談を踏まえて、必要な患者が、適切な医療機関につながり、来院が必要な際は予約が可能になります。そして、(実際の診療は予定通り進まないことから)順番待ち状況がリアルタイムで可視化され、現在地のデータと比較することで最適な移動開始タイミングが提示されます。場合によってはモビリティサービスが連動することで、スムーズに医療機関まで移動し、到着後待ち時間なしで受診することができます。診療後は決済アプリや電子処方箋とID連携されることで、待つことなく帰宅することが可能になります。これにより、医療機関のオペレーションも最適化されます。

また、医療機関においては医師の事務負荷軽減とデータ利活用の促進を両立すべく、音声認識AIや優れたUIによるアプリケーションによって、医療従事者は患者と向き合いながら、負荷無くデータ入力することを目指すべきでしょう。

診断を待つ親子の写真
photo by shutterstock.com

2. 健康に対する成果(アウトカム)を最大化させる設計になっていない


●課題
医療の目的は何でしょうか? 手術をすることでしょうか? 薬を処方することでしょうか? 当然これらは医療の手段であって、目的ではありません。では、病気を治すことでしょうか?もちろん、残念ながら病気になってしまった場合、治すこと、治せないとしても患者のQoL(Quality of Life:生活の質)を向上させることは目的です。しかし、そもそも、全国民が健康な状態を保つことが医療の大きな目的と考えられるべきではないでしょうか。そのように考えると、医療の成果とは健康を維持できているかどうかであり、究極的には医療サービスの対価は健康であることに支払われるべきとも言えます。

もちろん、技術的な難しさがあり、現在の国の制度は主に「(診察や検査、投薬など)何を提供したか?」に応じて報酬が支払われるようになっており、その上で疾病に対して「何をすべきか」を定義していくことで、本来の成果である健康であることを実現させる仕組みとなっていますが、複雑・高度化していく医療において、医療資源の最適化と市民のQoL最大化を両立させるためには大きな変革が求められています。

一方で、生活習慣病をはじめ、一度の処置よりも、長期間での予防・治療・予後の管理が重要な疾病が増えていること、デジタル技術などで健康状態の追跡が可能になっていること、から、各国で健康状態の「成果」に対してインセンティブを与える仕組みの実証が始まっています。
次ページ > 住民と医療の関係を根本変える(図解)

文=藤井篤之(アクセンチュア)

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