バラバラの医療データから一貫型のデータへ
一人ひとりを中心としたこのモデルの鍵となるのが、一貫型PHRです。「PHR:パーソナルヘルスレコード」の名の通り、「その人個人のための生涯の健康を支える、一貫型のデータ連携」を意味します。
現在の健康・医療データが医療機関や施設などで分断されており、その人の健康状態や予防予後とリンクした日常生活のデータもありません。これらのデータを本人という区切りで見直し、普段の生活と医療機関のデータ、要介護者は介護・福祉施設のデータ、さらに妊娠や乳幼児、学童・学生期間のデータを個人と紐付けるデータモデルとすることで、市民本人が何を必要としているかという観点でのケア・治療が可能になります。
本人に関するデータを、本人による承諾(オプトイン)のもとで民間企業や医療機関、保険者で活用することにより、市民が末長く健康を維持できるための行動変容や予防モデルの策定を進めることができます。地域全体で市民の健康が増進し、国や自治体の課題である医療費負担の軽減につながります。
出典:会津若松市
スマートシティと医療がどのように結びつくのか、本記事でイメージがつかめたでしょうか。
各サービスをつなげることで、患者と医師の双方がエクスペリエンスを最適化し、市民の健康増進に向かって体制構築が可能となります。
スマートシティは生活者(市民)を中心とする都市のあり方そのものを指す時代に突入しています。次回以降は日本と世界のスマートシティの事例を交えながら、社会や経済、企業経営のあり方を考察していきます。
●【連載】スマートシティ会津若松の今
#1:ストレスフリーの未来の医療はすでに始まっている藤井篤之|アクセンチュア l ビジネス コンサルティング本部 ストラテジーグループ マネジング・ディレクター。名古屋大学大学院多元数理科学研究科博士後期課程単位満了退学後、2007年アクセンチュア入社。スマートシティ、農林水産業、ヘルスケアの領域を専門とし、官庁・自治体など公共セクターから民間企業の戦略策定実績多数。共著に『デジタル×地方が牽引する 2030年日本の針路』(日経BP、2020年)。