●改善アプローチ
デジタルを活用した地域全体での医療サービスの提供の実現が具体的なアプローチです。蓄積されたPHRデータの活用により、従来は医療機関や介護・福祉施設などサービス提供者の単位となっていた医療サービスを地域単位で地域住民の健康を管理する仕組みへと転換します。
地域全体の医療・介護関係者が、地域の住民の健康管理をデジタル上で行えるようにすることで、地域全体の健康スコアを可視化し、それを地域全体での成果として比較、将来的にはインセンティブ設計にまで組み込むことができれば、地域という単位で予防・治療・予後まで医療・介護の関係者が皆で責任と成果を分け合う仕組みが実現します。
さらに、地域内の各医師について客観的なデータ(疾病別の実績、処方薬の傾向など)に基づくインデックスを整備することで、前述のオンラインでの相談機能と合わせて、患者は適切な医師を選択できるようになります。
※Dr.インデックス|ここではどの医師が何を専門としているか、どういった実績があるかなどが分かるシステム。その客観情報を元に自らの判断で受信する医師を選択する。AIによるレコメンドも可能だ。
出典:会津若松市
3. 医療やケアが断片化している
課題
医療・介護のサービス提供者間や、多くの情報を保有する自治体との連携インセンティブと体制が整備されておらず、個対個のケアに閉じていることが課題となっています。
また、治療・ケアのためのデータの断片化も喫緊の課題です。紙ベースのデータがいまも多くの医療機関で残存しているほか、電子データであってもデータベース間の連携が十分とはいえません。そのため、過去の病歴などの経緯を踏まえた一貫性あるケアの提供が実現できていません。
●改善アプローチ
医療データの統合的管理(ライフステージ一貫型PHR)の実現がこの課題解決への有力なアプローチです。医療提供者別に紙ベースや発生場所ベースで管理されている医療関連情報を市民自身が一元的にマネジメントできるシステムを、PHRを主軸として構築することでサービス連携のハードルが大きく低下します。
そしてこれらの仕組みの基盤となるのがデータとサービスを繋ぎ、領域横断や広域連携地域と、医療機関ごとに閉じないモデルを実現するための「都市OS」です(都市OSについては次回詳しく解説します)。