さて、食事を終えてヨットに戻ったら何をするか。それはもう、あたり一面に広がる地中海に飛び込むしかない。水温も高く、透明度も高いので、それはそれは大変気持ちの良い海水浴を楽しめる。そこら中で群れをなす魚たちと泳ぐこともできるし、運が良ければウミガメと出会うこともあるそうだ。
しかし、あまり大きな声ではいえないのだが、残念ながら僕は今のところ泳ぎ方というものを知らない。美しい地中海を前にしてもやることがないのだ。仲間たちが魚たちと戯れている間、僕はビーチサイドかヨットの上でビールを飲みながら、彼らが海からあがるのを待つことになる。
そこで万が一飲み物がなくなってしまったらいよいよ困ってしまうのだが、フェティエの海にはそんな僕を安心させてくれるありがたいサービスがある。なんと、食料品や日用品などを積んだ船が海を巡回しているのである。まさに海のスーパーマーケットだ(実際、運営しているのはカルフールなどの大手スーパーだったりする)。おそらくは1週間以上の船旅に出ている人たちをターゲットにしているのだろうが、僕らのような短期クルージングの人にとっても、ヨットに乗り込む際に買い忘れたものがあった時などに嬉しいサービスだ。
ヨーロッパの夏は日が長いので、1日借りれば十分に地中海を満喫できる。しかし、フェティエでヨットを貸し切ったら、ぜひやってみてほしいことがある。ヨットでの宿泊だ。
たとえば、Irmak Yachtingで40フィートのヨットを借りたとしよう。そこにはリビングがひとつと寝室が3つあり、6人が泊まれるようになっている。もちろん船内には電気もあれば、キッチンや冷蔵庫、トイレにシャワーもある。まさにホテルと同じ感覚で過ごせるのだ。
船の上だと揺れが心配だという人もいるだろうが、幸いにして夜も波はほとんど立たないので、揺れを気にせず快眠できる。夏だったら寝室を使わずとも、船のデッキで飲んだくれ、そのまま満天の星空の下で寝たって一向に構わない。こんな贅沢な体験をしたら、もう日本に帰る気なんてなくなってしまうのが、ヨットを貸し切る唯一で最大のマイナスポイントかもしれない。
1泊2日でヨットをレンタルして、料金は600ユーロから700ユーロ程(時期により変動あり)。6人でヨットを借りたら、1人およそ1万円ちょっとだ。ホテルに1泊してもそのくらいかかるだろうし、さらには2日間に渡って地中海を満喫できるのだから、なんともコストパフォーマンスの良いバカンスの過ごし方ではないだろうか。
これからの時代は、自分でWi-Fiをヨットに持ち込み、ヨットの上で仕事をする、なんて働き方をする人も出て来るだろう。「海の上のオフィス」は、今後注目を浴びてくるかもしれない。フェティエでヨットに乗ってみて、なぜ海の男がそれほどまでに海に惹かれるのか、その理由がわかったような気がする。
さて、ひたすらフェティエの海の魅了を語らせていただいたが、海から上がってもフェティエの魅力は尽きない。この街には、まだまだ人々を惹きつけてやまないものがある。ここで書くとちょっと長くなりそうなので、フェティエの魅力の「陸編」は、また紹介させていただきたいと思う。
連載 : 世界漫遊の放送作家が教える「旅番組の舞台裏」
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