Irmak Yachtingでヨットをレンタルする客は、欧米人が大半だという。彼らには日本人とは違って「バカンス」という文化があるので、ヨットのレンタル期間は1週間からというのが基本になる。バカンスのハイシーズンとなる7月、8月、そして9月の上旬あたりまでは、すべてのヨットが出払ってしまうそうだが、それ以外のシーズンでヨットに空きがあれば、1日単位でもチャーターは可能だ。
せっかくヨットで地中海に出るのだから、温かい時期がいいと思うのは当然だろうが、フェティエでは4月から11月くらいまで、海で泳げるほど温暖な気候が続く。夏のハイシーズンを外しても十分に海を満喫することができるのだ。
さあ、僕らの目の前にはターコイズブルーに輝く地中海が広がっている。ヨットのレンタル手続きはゆかりさんに一任して、いざ地中海へと船を出そう。もちろんヨットの運転には船舶免許が必要だが、同行するメンバーが誰も船舶免許を持っていなくても大丈夫。Irmak Yachtingが運転手もレンタルしてくれるのである。
きらめく地中海で贅沢なひととき
フェティエでのヨットクルーズは実に魅力的だ。なぜなら、その地形に理由のひとつがある。このあたりは湾になっているので波があまり立たず、海が常時穏やかなのだ。ヨットハーバーを出航してからしばらくはエンジンを駆動して進んでいくのだが、ある程度沖に出たらエンジンを切り、帆を立ててセーリングモードに切り替えてみよう。先程までのエンジン音が止むと、ヨットの上には急に静寂が訪れる。音はしないのだけれど、船は着実に前へ前へと進んでいく。
それは実に不思議な体験だ。まるで自分が大自然の一部となり、地球とひとつになったかのような、そんな感覚に包まれる。それは、陸上で生活しているのでは絶対に味わうことのできない感覚だ。「今まさに自分の中の第六感が刺激されている」という事実が、それこそ手に取るようにわかるのだ。そんな機会なんて、そうそうないだろう。
もし、ここがフェティエではなくマルセイユあたりの海だったら、そこら中が、ヨットだらけである。うるさいし、よそのヨットが気になってどうも落ち着かない。その点、フェティエではゆったりとした気分でクルージングが楽しめるのも素晴らしいところだ。
このあたりは海のシルクロードの一部とされており、歴史的にも興味深い島々が点在している。例えばフェティエの南に浮かぶゲミレル島もそのひとつ。この島には、あのサンタクロースのモデルと言われる聖ニコラウスが埋葬されているという説が伝えられている。また、フェティエ近郊の入江には、クレオパトラに献上されたハマム(浴場)跡が残るなど、歴史好きの人も満足できるクルージングとなるだろう。
しばらくクルージングを楽しめば、ちょうどお腹もすく頃だ。このあたりの入江には、道路が通っておらず、船でしかアクセスすることのできないレストランが点在している。そんなレストラン専用の船着場にヨットを留めて、ゆっくりと食事を楽しんでみよう。
透き通った地中海を眺めながらの贅沢なひととき。まるで映画のワンシーンのようなシチュエーションに包まれれば、もはや食事の味なんて関係ない(決して料理が不味いわけではない。料理の味がわからなくなるくらい、圧倒的に贅沢な気分に浸れるのだ)。