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ASIANEWS シンガポール支局長

トルコ・イスタンブールで開催された国際的フードイベント、第3回「ガストロマサ」にて

伝統的に世界三大料理とは、中華料理、フランス料理、トルコ料理と言われてきた。とはいえ、好きなトルコ料理を3つあげてみろと言われたら、頭を抱えてしまう人も多いかもしれない。それほど他の2つに比べて、トルコ料理は一般的ではない。

しかし、トルコといえば、かつて威容を誇ったオスマン帝国のスルタンたちが、東西の交流点という地の利を生かし、豊かな食材を各国の料理人たちに調理させた、宮廷料理の文化があった場所でもある。

そのトルコで、いま国を挙げて、美食による観光客誘致「ガストロツーリズム」の波が起きている。「世界のベストレストラン50」で何度も第1位に輝いたレストラン「noma(ノーマ)」を旗艦として、首都コペンハーゲンを一躍食の街に押し上げたデンマークに続けとばかりに、世界に向けてトルコ料理の素晴らしさを発信している。

その中心が、トルコのグルメ雑誌発行人、ギョクメン・ソーゼン氏が主催して行なっている国際的フードイベント「ガストロマサ」だ。毎年、世界のトップシェフを招いて豪華なデモンストレーションが行われるが、会場の外にはトルコの食をPRするブースが立ち並び、世界から訪れたメディアだけでなく、チケットを買い求めた来場者たちで賑わいを見せている。去年12月に開催された第3回「ガストロマサ」でも、世界から集まった18人のシェフや料理関係者が腕前を披露した。

トルコを訪問する観光客は、2016年はテロの影響もあり、2500万人にまで落ち込んだものの、この積極的なガストロツーリズムの成果か、2017年は11月時点で約3100万人と増加している。

また、ユネスコ創造都市ネットワークの食文化カテゴリーに認定されるなど美食の街として知られるガジアンテプ市のオヤ・アルペイ次長も、「通常の観光ツアーではなく、『食』を目的とした海外からのフードツアーも増えてきており、トルコの食に光が当たってきている感じがする」と、筆者に語った。

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第3回ガストロマサで提供された、トルコの著名シェフ、メフメット・ゴックによる料理

しかし、ガストロツーリズムの影響はそれだけではない。このイベントがきっかけで、大きく人生が変わったシェフもいる。バンコクの5ツ星ホテル「Wホテル」内にある高級レストラン「ザ・ハウス・オン・サトーン」のトルコ人シェフ、ファティ・トゥタックだ。

「ガストロマサで出会った一人のシェフの言葉が、私に勇気を与えたのです」と語るファティ・トゥタックはイスタンブール出身の32歳。彼は料理学校を卒業後、最初はイスタンブールの最高級ホテル「チューランパレス・ケンピンスキー」内のオスマン帝国時代の料理を提供するレストランで働いていたが、20歳の時、世界を見たくなってトルコを飛び出した。

その後、日本の「龍吟」をはじめとして、シンガポールや香港など、アジア5カ国の和食や地中海料理のレストランなどで働いたが、2014年、中華系の豪商の建てた歴史的建造物でもあるバンコクの「ザ・ハウス・オン・サトーン」の料理部門の統括ディレクターに就任。メインダイニングで提供する、日本食材にインスピレーションを得たモダンアジア料理は、当地でもかなりの人気を博しており、すべてが順調だった。

そんな彼の人生に一石を投じたのが、2016年12月に開催された第2回「ガストロマサ」だった。そこで、現在世界のベストレストランで第9位の「ムガリッツ」のシェフ、アンドーニ・ルイス・アドゥリスと出会い、こう言われた。

「トルコの料理は、豊かな歴史も味わいもあるのに、プレゼンテーションが未熟だ。ファティ、海外での経験を積んで最新の技術とプレゼンテーションを知る君こそ、トルコの料理を表現するべきだ」

アドゥリスは、トゥタックにとって、料理の世界を目指した10代の頃から憧れの存在だった。「未来的な、最新の調理法を発明し、食事客に素晴らしい体験を提供する天才」だと、ずっとその背中を追いかけてきた。そんな憧れのシェフの言葉に、心が揺らいだ。

文=仲山今日子

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