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エディター、ライター

モリッツ・グロスマン アトゥム

今回登場していただいた片岡定一さんは、いい機械式時計を代々受け継いでもらいたいと願う、良心のコレクターだ。いま、お気に入りの時計はモリッツ・グロスマンだという。その理由とは?


外資系および国内のIT企業でプロジェクトマネジャーを歴任し、現在は投資家として活躍されている片岡定一さんは、高級時計を約100本も所有する時計コレクターでもある。

そして、そのコレクションの一部を見せていただくと、思わず唸ってしまうほどの名品ばかり。かなりの目利き、と思ったら、「ウォッチコーディネーター資格」をお持ちであった。そんな片岡さんが、いまお気に入りなのがモリッツ・グロスマンだという。その理由をお聞きすると“玄人”ならではの答えが返ってきた。

「まず、シンプルなデザインが気に入ってるというのがあるんですが、エングレービングというのもあります。私は名前もしくはイニシャル、購入した日付などを時計に彫ってもらっているんですが、モリッツ・グロスマンはそれを機械に直接、手で彫ってくれるのです」

ケースバックを含め、ケース自体にエングレービングしてくれるブランドは多い。しかし、ムーブメントに彫ってくれるところは、なかなかない。1回バラして、エングレービングを入れてまた組み上げるという作業はとても大変だからだ。しかし、モリッツ・グロスマンは、それが可能。かなり貴重なブランドである。

「エングレービングをはじめたきっかけは、私が引き継いだ父の腕時計を、甥に就職祝いとして贈ったところ、とても喜んでもらえたことからです。それで、自分の時計を子供や孫に引き継ぎたい。ずっと使ってもらえれば、と思ったのです。それは機械式時計だからこそ可能なことでもあります」

時計を集めている人のなかには、投資が目的の人もいる。片岡さんも「エングレービングなんかしたら価値が落ちる」と言われることもあるそうだが、他人に売る気がまったくないので関係ない、と笑う。

現在、片岡さんが所有するモリッツ・グロスマンは6本。シンプルなデザインが気に入ってるとのことだが、もうひとつのポイントが針だという。

「針が長いのです。長い針ほど、動かすのにパワーもいるので、これを見ると機械の良さもわかりますね。それにモリッツ・グロスマンは、針も自社で作っているのです。その針の長さも含めて、19世紀の懐中時計に近い腕時計といえそうです。ムーブメントを見ても、昔の懐中時計を忠実に再現されている。それも大きな魅力です」

そんな片岡さんも、時計はその日の気分で選ぶというが、モリッツ・グロスマンに限っては、フォーマルなときに着けることが多いという。やはり時計の品格が、着る服を選ぶのであろう。



MORITZ GROSSMANN/ATUM Enamel Japan Limited
モデル名の「アトゥム」とは、古代エジプトの創造神でヘリオポリスの九柱神の筆頭。つまり、すべてはアトゥムからはじまったとされる。その名を冠されたようにすべてのモデルのベースとなれるほどシンプルに、針、インデックス、文字などがバランスよく配置されている。このモデルは、独特の美しい光沢を持った“グラン・フー・エナメル”のダイヤルが大きな魅力。クラフツマンシップが息づいている。

ムーブメント : 自社製 Cal.100.l 手巻き
パワーリザーブ : 約42時間
ケース素材 : 18Kホワイトゴールド
ケース径 : 41mm
価格 : 4,752,000円
問い合わせ : モリッツ・グロスマン ブティック 03-5615-8185


片岡定一◎1962年生まれ。IT企業での勤務を経て、2015年にベンチャー企業などを支援する投資会社を設立。所有する6本のモリッツ・グロスマンの時計は、3種の時計を2本ずつ所有。いずれは愛する2人の娘に譲ることを決めていて、その際に2人に公平に贈るため。

text by Ryoji Fukutome illustration by Adam Cruft edit by Tsuzumi Aoyama

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