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2025.04.21 17:00

韓国初の「AIチップのユニコーン」が狙うグローバル市場の隙間

Shutterstock.com

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今から約1年前、ソウル南部の城南(ソンナム)市に本拠を置く人工知能(AI)向けチップの設計企業Rebellions(リベリオンズ)の共同創業者でCEOのパク・ソンヒョン(40)は、まったく予想していなかった相手からの電話をとった。市場シェアで韓国最大の携帯電話事業者であるSKテレコムのトップ、リュ・ヨンサンCEOが、「半導体事業で提携したい」と申し出てきたのだった。

だが、パクはこの合併話を持ちかけられる前から、「他社との合併こそが生き残るための唯一の道だと思っていた」と率直に語る。

リベリオンズは、電力消費を抑えたAI向けチップで頭角を現していた。このチップの用途は多岐にわたり、一部のヘッジファンドが株式市場で行う高頻度取引からOpenAIのChatGPTのような大規模言語モデル(LLM)の支援までが含まれる。パクは、2020年の会社の創業以来、5回の資金調達ラウンドで2億2500万ドル(約320億円)を集め、韓国のデータセンター向け市場の一角を占める「Atom」シリーズの開発を進めていた。

当時、同社はAIの膨大な電力消費に対応する次世代の省電力チップの開発を進めていた。だがパクは、世界規模での野望を実現するためには、「自社だけでは限界がある」と痛感していた。

一方、SKテレコムはAIチップのスタートアップ「サピオンコリア」を自社に擁しており、国内市場でリベリオンズと競り合っていた。そのためリュとパクは、両社が力を合わせれば、国内にとどまらず世界の業界を支配するエヌビディアに対抗できる半導体企業が誕生するという結論をだした。

「AIチップで生き残れる企業はごく一部だ。変化の激しい市場で、優秀な人材を一社に結集させる必要がある。国内の争いで時間とエネルギーを浪費したくなかった」とパクは語る。

世界市場でわずかでもシェアを獲得できれば、状況は一変する。調査企業ガートナーによると、AIチップの需要は過去2年間で爆発的に増加しており、2025年の世界のAIチップの売上高は、2024年の710億ドル(約10兆1000億円)から29%増の920億ドル(約13兆1000億円円)に達する見通しだ。

韓国初、AIチップのユニコーン

そして2024年12月、株式交換による両社の合併手続きが完了した。評価額約1兆3000億ウォン(約1300億円)の韓国初となるAIチップ・ユニコーンとなった新会社は、リベリオンズの経営陣と社名を維持し、同国内最大のAIチップサプライヤーとなった。同社の主要顧客には、SKのクラウド部門や「カカオトーク」のカカオ、ネイバーなどのハイテク大手が名を連ねている。

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編集=上田裕資

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