「リベリオンズとサピオンとの合併は、最も賢明な判断の一つだ」とサウジアラムコのベンチャー部門Wa’ed Venturesの最高投資責任者モハメド・ジーシャーン・ハッサンは語る。「韓国のような小さな市場で、わざわざ隣人と競争しても意味がない」と彼は述べている。
合併後もリベリオンズの約10%の株式を保有するパクにとって、この提携は会社に大きなメリットをもたらした。その一つは、SKグループのメモリチップ部門である「SKハイニックス」が製造する次世代製品の「HBM3E」へのアクセスが可能になったことだった。
「世界の半導体業界では、チップを製造する能力を持つファウンドリーと、次世代メモリのHBM(高帯域幅メモリ)の供給が追いついていない」とパクは語る。SKハイニックス以外でHBMを供給できるグローバルプレイヤーは、サムスン電子と米アイダホ州に拠点を置くマイクロンの2社だけだという。
巨人エヌビディアとの戦い
とはいえ、韓国国内でさえ売上を伸ばすのは簡単ではなく、海外市場での成長はさらに難しい。AIチップ市場では、全世界で約90%のシェアをもつエヌビディアが圧倒的な存在であり、それ以外の企業からチップを調達するようデータセンターに働きかけるのは、そもそもチップを開発するのと同じくらい困難だ。
英調査会社Futurum Intelligenceによると、エヌビディアの2025年1月期第4四半期におけるデータセンター向けチップの売上は356億ドル(約5兆700億円)に達し、2位のAMD(売上39億ドル、約5560億円)に対して9倍の差をつけている。
それに比べれば、リベリオンズは規模の面でまったく敵わない小さな存在だ。同社が2025年に掲げている売上目標は1000億ウォン(約100億円)にすぎない。なお、直近の公開資料によれば、2023年度の売上は約180万ドル(約2億5600万円)で、前年の数字は非公表だが、2023年の純損失は約930万ドル(約13億2000万円)と、2022年の約550万ドル(約7億8300万円)からさらに拡大している。
こうした現状を踏まえ、リベリオンズは自社のAIチップがエヌビディア製品をしのぐ明確な強みを持つことを証明し、シェア争いに食い込もうとしている。そのためにパクは、自社のチップ「Rebel」がエヌビディアのAIチップよりも電力効率において優れている点を強調している。


