2026年初頭に量産開始予定のリベリオンズのRebelは、生成AIの推論処理に特化しており、エヌビディアの「H100」と比べてAI処理の電力消費を3分の1に抑えられるという。またメモリ容量も大きな強みで、H100のメモリ容量が80GBであるのに対して、Rebelは144GBのメモリを搭載しているという。そのため、たとえばメタのLLM「Llama 3.1」を動かす場合に、H100は2基が必要となるが、Rebelなら1基で済むという。
「全体的なコストで見ると、推論での使用に限ればRebelはH100より安価だ」とパクはいう。H100の最大消費電力が400Wであるのに対し、Rebelチップは350Wで1ペタフロップ(1秒間に1000兆回の演算)を実現できるという。ただし、「もし学習と推論の両方をやりたいのであれば、H100の方が適している」とパクは認めている。
韓国の「世界トップの半導体人材」
一方、「優秀な人材の採用が、リベリオンズのこれまでの成功の鍵だった」と語るのは、カカオベンチャーズのキム・ギジュンCEOだ。彼は2019年にパクと初めて会い、1時間の会話の後にリベリオンズへの20億ウォン(約2億円)の出資を即決した。キムによると、パクは厳しい採用基準で半導体大手での経験を持つエンジニアを起用するなどして、リベリオンズを「誰もが乗りたがるロケット船」に仕立て上げたという。
韓国は、人口が約5000万人の比較的小規模な国でありながら、世界トップレベルの半導体人材を持っている。世界最大級のメモリチップメーカーであるSKハイニックスとサムスン電子を擁する同国には、ハンミ半導体や化学メーカーのソウルブレインなどの重要サプライヤーもそろっている。また、政府の支援もこうした財閥とスタートアップが混在する濃密なテックエコシステムを育む要因となっており、ソウルブレインの最大顧客はサムスンであり、ハンミはSKハイニックスに装置を供給している。
半導体は、輸出依存度の高い韓国において最大の輸出品目であり、6840億ドル(約97兆4000億円)となる年間輸出の約20%を占めている。また、そのうち米国向け輸出は全体の19%となっている。ただし、韓国の半導体はトランプ米大統領による関税措置から今のところ免れてはいるものの、AIサーバーのような製品に組み込まれることで、間接的に米国の輸入関税の影響を受ける可能性は排除できない。


