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2025.04.16 11:00

米国の技術に頼らない「オープンソースの半導体」を作る中国企業

Shutterstock.com

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中国のチップ設計スタートアップ、上海Starfive Technology(上海スターファイブ・テクノロジー)の半導体は、インテルのx86やArmの製品とは異なる、欧米企業の影響下にない「RISC-V(リスクファイブ)」と呼ばれるオープンソースのアーキテクチャをベースとしている。

中国は、長年に渡って半導体産業を欧米の技術から自立させようとしてきた。米中関係が悪化する中、半導体の自給自足化は同国にとって急務となっている。

そんな中、香港の不動産開発会社、恒基兆業地産(ヘンダーソン・ランド・デベロップメント)の共同会長である李家傑(ピーター・リー)が出資するStarfiveは、RISC-Vベースの半導体の開発で着実な進歩を遂げている。

上海に本拠を置く同社は、慎重かつ綿密なアプローチを取る企業で、確実に成功を収めるためにガス使用量のデータ収集を自動化するスマートガスメーター向けのチップの開発から事業をスタートした。同社の出資者である李の恒基兆業地産は、香港と中国本土で都市ガス事業を展開する香港中華ガスを傘下に持つため、この戦略は理に適っていた。

Starfiveが次に狙いを定めたのは、急成長中のデータセンター分野だ。設立6年の同社は、データセンター向けのRISC-Vチップを開発し、中国のファーウェイからスピンオフしたXfusion Digital Technologiesなどを顧客に獲得している。

「これまでのところ、当社のデータセンター管理チップに類似したRISC-Vベースのチップを開発した企業は他に存在しない。当社は商業的に確実な競争力を持っている」とStarFiveの創業者でCEOのトーマス・シューは語る。米国のHPに務めた経験を持つ彼は、かつては上海のファブレス半導体企業である灿芯半导体(Brite Semiconductor)のCEOを務めた半導体設計のベテランだ。

Starfiveは、中国で最も早くからRISC-Vチップの設計を手がけてきた企業の1つだ。この領域には、アリババのチップ部門であるT-Headやファーウェイの子会社であるHisiliconが参入している。このアーキテクチャは、スマートフォンからChatGPTなどの人工知能(AI)ツールに至るまで、あらゆる用途向けのチップ設計に使用されているが、性能はインテルのx86やArmにまだ遅れをとっている。

RISC-Vは、スイスを拠点とする非営利財団が運営しているオープンソースのアーキテクチャで、中国政府はこのアーキテクチャの採用が欧米への依存度を低減する重要な手段だと考えている。ロイターが3月に報じたところによると、中国政府は今年初めて全国的にRISC-Vチップの使用を奨励する政策指針を発表する予定という。

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編集=上田裕資

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