今年1月、中国のほぼ無名の人工知能(AI)のスタートアップDeepSeekが発表したAIモデルは、米国のハイテク大手に匹敵する高度なオープンソースモデルを、競合よりもはるかに少ないリソースで開発したことで世界を驚かせた。OpenAIやAnthropicなどの大手も、同社の成果を称賛している。
しかし、世界レベルで注目を集める中国のAI企業やツールは、DeepSeekだけではない。たとえば、テンセントが開発したAIチャットボットの「元宝(Yuanbao)」は、3月上旬に中国のiPhoneアプリのダウンロードランキングで、DeepSeekを抜いて首位に躍り出た。このアプリは、テンセントが自社開発した大規模言語モデル(LLM)の「混元(Hunyuan)」とDeepSeekのAIモデルの「R1」を統合したものだ。
また、TikTokの親会社バイトダンスが開発したLLMの「豆包(Doubao)」の派生版は、物理空間を分析して3Dのランドスケープを生成する空間モデルを実現した。さらにアリババのLLMである「Qwen(通義千問)」は、同社のプラットフォーム上で9万社を超える法人ユーザーを獲得している。
ジャック・ドーシーが注目するAI企業
一方、DeepSeekの急成長は、中国の他のAIスタートアップの台頭も促している。3月には、武漢に拠点を置くスタートアップ企業のButterfly Effectが「Manus」と呼ばれるAIシステムを発表した。このシステムは、ウェブを自律的にブラウジングし、アパートを探したり、株式市場を分析したりする能力を持つとされ、OpenAIのAIエージェントの「Operator」のライバルとして注目を集めている。
excellent https://t.co/TfeV9QZ1d0
— jack (@jack) March 9, 2025
Manusのデモ動画はツイッターの共同創業者ジャック・ドーシーにX(旧ツイッター)で共有されたことでも注目され、投資家の関心を集めている。ニュースサイトThe Informationは、のButterfly Effectが評価額5億ドル(約718億円)で米国の投資家から資金調達を行う計画だと報じている。
また、中国はヒューマノイド(人形ロボット)の領域でも大きく前進している。この分野で注目を集める2023年設立の智元機器人(Agibot)は、2020年にファーウェイの高度人材募集プログラム「天才少年」に採用された1993年生まれの若手研究者、彭志輝が創業した企業としても話題になっている。
Agibotは、すでに1000体以上のAI搭載の二足歩行ロボットを製造しており、年末までにその数を5000体に増やす計画を進めている。同社は、4月初めにアルファベットのムーンショット部門であるGoogle Xに在籍していた羅建蘭を研究開発責任者に招聘したことでも注目された。