一方、グーグルやマイクロソフトの中国進出を支援した著名投資家の李開復(カイフ・リー)は、2022年に零一万物(01.AI)と呼ばれるAIスタートアップを創業した。同社は、独自のオープンソースモデルの開発から事業を転換し、DeepSeekのAIを活用してゲームや法律、金融分野の法人向けアプリを開発している。PitchBookによると01.AIは、これまで2億ドル(約287億円)を調達し、評価額は10億ドル(約1440億円)に達している。
同社は中国のAI業界における「シックス・タイガース」の1社とされており、マルチモーダルAIの開発企業MiniMax AIや、モデル開発企業の月之暗面(Moonshot AI)とともに、アリババからの出資を受けている。
「中国のAI研究」の強み
こうした中国のAIの進展は、米中関係の緊張が高まる中で起きているが、スタンフォード大学・人間中心AI研究所(HAI)の事務局長ラッセル・ウォルドは、フォーブスに対し、中国のAIの進展は、大学での学術研究とAI研究の成果をオープンなかたちで論文やデータとして公開する姿勢によって後押しされていると語った。
中国は2018年に「2030年までにAIで世界のリーダーになる」という目標を掲げ、その目標に向けて膨大な学術資源を投入してきた。その結果、現在では世界のAI研究の多くを中国が生み出している。2023年には、世界全体のAI関連特許の約70%を中国が取得し、中国が発表したAI関連の学術論文が世界全体の23%を占めていた。
「この方向に進もうと政府が決めれば、そこに向けて力を結集できるのが中国だ」とウォルドは語った。ただし、彼はまた、中国政府によるAIモデルへの検閲が、西側のユーザーにとっては障壁になる可能性があるとも指摘した。
そんな中、誰でもモデルをダウンロードしてアプリを構築できるオープンソース方式は、中国企業が世界にそのテクノロジーを広める上で、大きな助けになっている。長年にわたり、米中のテックエコシステムは分断されてきたが、DeepSeekの成功は、中国のイノベーションがその壁を突破可能なことをAI分野に示している。
「オープンソースのリリースにおいて、もはや障壁は存在しない」と「AI分野のGitHub 」と呼ばれるプラットフォームを開発したニューヨークのスタートアップHugging Faceのプロダクト責任者ジェフ・ブーディエはフォーブスに語った。「ここにはグレート・ファイアウォールは存在しない」


