米国との貿易摩擦が激化する中でも、中国の株式市場はここ1年で急上昇した。ハンセン指数は、中国当局が経済支援の強化を約束したことで30%近く上昇した。また、DeepSeekが1月に発表したコストを抑えた人工知能(AI)モデルが、中国のハイテク分野への投資家の関心を再燃させた。
その結果、フォーブスが米国時間4月1日に発表した2025年版「世界長者番付」における中国の富豪の総資産は、前年から26%伸びて1兆6800億ドル(約245兆円)に達している。
本年度のランキングに登場した中国本土の保有資産が10億ドル(約1470億円)以上のビリオネアの数は450人で、昨年の406人から増加した。中国本土は、米国(902人)に次いで世界で2番目にビリオネアが多い地域となっている。
ここでいう「中国本土」には、香港やマカオのパスポート保有者は含まれず、フォーブスはこれらを別に扱っている。例えば、香港で最も裕福な人物であるCKハチソン・ホールディングスを所有する李嘉誠の保有資産は389億ドル(約5兆6800億円)に達しているが、彼は中国本土のビリオネアとしてはカウントされていない(香港の富豪を含めた「大中華圏」のビリオネアの数は516人に達している)。世界全体では、3028人のビリオネアが存在し、その総資産は16兆1000億ドル(約2350兆円)に及んでいる。
今年の中国本土のランキングからは、昨年のリストから23人が脱落した一方で、新たに31人が加わった。また、過去にランクインし、一度はリストから外れたが再び10億ドル以上の資産を持つに至った「復帰組」も37人いた。
注目すべき新顔の1人は、DeepSeekの共同創業者であるリャン・ウェンフェン(梁文峰)だ。彼はOpenAIなどの競合と比べてごくわずかなコストで、世界屈指の性能を誇るAIモデルを開発した。現在40歳の梁の保有資産は、DeepSeekとヘッジファンドのHigh-Flyerの持ち分にもとづいて10億ドル(約1460億円)と推定される。
2025年の中国富豪ランキング、その上位10人の総資産は4005億ドル(約58兆5000億円)となり、昨年の3040億ドル(約44兆4000億円)を1000億ドル近く上回った。飲料大手、農夫山泉の会長であるジョン・シャンシャン(鍾睒睒)は、2024年まで4年連続で中国一の富豪だったが、今年はバイトダンスの創業者で保有資産655億ドル(約9兆5700億円)のチャン・イーミン(張一鳴)にその座を譲っている。第2位に後退した鍾の保有資産は575億ドル(約8兆4000億円)で、2024年の623億ドル(約9兆1100億円)から減少している。
今回のランキングで初めて中国一の富豪となったチャンは、この1年で資産を50%以上増やしている。TikTokの親会社であるバイトダンスは、米国においてその先行きに懸念があるものの、非上場である同社の企業価値は、AI技術への期待を背景に昨年の2170億ドル(約31兆7000億円)から3000億ドル(約43兆9000億円)以上に上昇した。
バイトダンスのチャットボットアプリ「豆包(Doubao)」の月間アクティブユーザー数(MAU)は、8200万人に達し、2024年2月時点で4億100万人のMAUを持つOpenAIのChatGPTに次ぐ世界2位の人気AIチャットボットとなった。また、DeepSeekのチャットボットは6200万人で4位につけている。