2024年、中国はAIチップに関して複雑な状況に直面している。一部では過剰供給に陥る一方、高度なAI開発に必要な高品質の演算能力は依然として不足している。
この矛盾は、単なる技術的な問題や地政学的な駆け引きの副産物にとどまらない。これは、野心や即興的な対応、そしてゴールドラッシュ的な熱狂がもたらした思いがけない結果という、人間的要素が深い物語でもあるのだ。
まずは1つの光景を想像してほしい。中国各地の広大なデータセンターには、世界最高水準のGPUが大量に設置されているが、それらは用途を与えられずに待機している。だが同時に、最近の画期的な成果で注目を集めるAI企業DeepSeekは、次世代AIモデルを構築するために必要な計算リソースが不足していると主張している。どうしてこれら2つの状況が同時に成り立つのだろうか。
これを理解するには、まず最近の経緯を振り返る必要がある。米国が中国に対して最先端のAIチップへのアクセスを制限したとき、中国の企業や地方政府、国営の通信大手は予想どおりすばやく動いた。すなわち在庫の積み増しだ。
人間は不足を感じると、昔から物資を溜め込んできた。彼らはエヌビディア製チップを大量購入し、AIデータセンターを建設し、将来の需要を見越して巨大な演算クラスターを構築した。さらに中国の購入者たちは、近隣地域の第三者を通じてエヌビディアの最新AIチップ(新しいBlackwellシリーズを含む)を注文し、米国の輸出規制を回避し続けている。しかし、AI主導の未来に備えるあまり、多くの企業が「これだけの演算能力を実際に何に使うのか」という根本的な問いを見落としてしまった。
非効率性の問題
このパラドックスに対する第一の説明は、物流と配備の問題だ。2024年、中国は少なくとも100万個のAIチップを追加して計算能力を拡充したとされる。これは大きな数だが、米国はこれより数倍のAIチップを稼働させているとも推定されている。ただし、中国で導入されたチップは効率性を重視して配置されたわけではない。むしろ質のまちまちなデータセンターに分散され、需要の乏しい場所にも設置された。AIブームに乗りたい企業や地方政府は、明確な戦略を持たずにインフラを整備し、その結果「低品質の計算リソース」とも呼べるものが大量に生まれたのである。