政府の軌道修正
中国政府はこうした非効率に気づいていないわけではない。その対策として、新たにデータセンターを建設する際には、特定の立地条件やインフラ要件を満たさなければ許可しない方針に転じた。また、クラウドコンピューティングを推奨し、企業が自社専用のGPUクラスターを抱え込むのではなく、計算リソースを共有するよう促している。理論上は、これらの施策によって高品質の計算能力を集中化し、本当に必要としているAI研究者の手に行き渡らせることが可能になるはずだ。
さらに中国政府は、新しいデータセンターの建設を立地やインフラの基準で制限し、リソースの有効活用を図るためにクラウドコンピューティングを奨励している。
とはいえ、長期的に見てこれらの対策がどこまで意味を持つのかがという疑問が湧く。
歴史的先例
19世紀の米国で起きた鉄道ブームを考えてみるとよい。産業化への熱狂の中で企業は需要を顧みずに線路を敷設したため、無用の長物となった路線もあれば、後に周辺産業や都市の発展に伴って本来の役割を果たせた路線もあった。最初は混沌としていても、やがてより効率的なシステムへと収斂していったのである。
同じことは中国のAIインフラでも起きると考えられる。現在の過剰供給は、やがて明日の飛躍を生み出す基盤となる可能性がある。現在は稼働せずに放置されているGPUも、AIの応用が広範囲に普及する将来への投資という見方ができる。計算リソースを統合し、推論主体へとシフトし、導入戦略を洗練させていく企業が最終的に生き残り、力をつけるだろう。そうでない企業は、中国におけるAI台頭史の片隅に埋もれることになる。
考察
DeepSeekの成果が注目に値する一方で、長期的なAI開発においては依然として先端チップへのアクセスが非常に重要であることも見逃せない。ある専門家が述べたように、「もし次世代モデルの訓練に10万個のチップが必要とされるなら、輸出規制は中国の最先端モデル開発に大きな影響を及ぼすだろう」。AIの動向は急速に変化し続けており、効率化と先端ハードウェアへのアクセスの両輪が、今後のグローバルなAI開発の行方を大きく左右するのだ。


