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2025.04.21 17:00

韓国初の「AIチップのユニコーン」が狙うグローバル市場の隙間

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Starlinkのチップも開発

パクは2006年に韓国の最難関理工系大学の一つである韓国科学技術院(KAIST)の学士課程を修了後に渡米し、マサチューセッツ工科大学(MIT)で電気工学とコンピュータサイエンスを学んだ。その後、インテルやサムスン、さらにはStarlinkを提供するイーロン・マスクのSpaceXにチップ設計エンジニアとして勤務し、2018年にはニューヨークのモルガン・スタンレーに入社。高頻度取引システム向けのクオンツモデル開発を通じて、「専用設計のチップを使えば、注文処理をさらに高速化できる」と気づいたという。

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その2年後にパクは帰国し、KAISTの卒業生でIBMのニューヨーク研究所で主任設計者を務めていたオ・ジヌクとともにリベリオンズを創業した。そして、カカオベンチャーズなどから55億ウォン(約5億5200万円)のシード資金を調達し、2021年には「Ion」チップのプロトタイプを開発。これをもとに、2023年には同社初の商用AIチップである省電力型「Atom」シリーズを発表し、「データセンター向けのコスト削減ソリューション」として売り出した。

リベリオンズがもつもう一つの強みは、単なるチップの販売ではなく「オールインワン」の提供にあるとパクは語る。「顧客から学んだのは、彼らが求めているのはすぐに使えるハードウェアなのだということだった。つまり『プラグ・アンド・プレイ』であることが重要だ」とパクは説明する。この業界では、ハイパースケーラーがAIチップを購入しても、設置には専門的な技術が必要で、その人材が不足していると彼は指摘する。「多くのチップ企業は粗利益率を守るため、販売後のサービスには踏み込まないのが通例だ」とパクは語った。

だが、リベリオンズは2023年11月、台湾の電子機器組立大手ペガトロンと提携し、Rebelチップを搭載したAIサーバーの開発に着手。その後2024年3月には、米カリフォルニアのペンギン・ソリューションズと連携し、顧客がAIチップのクラスターを自社インフラに組み込む支援を行う体制を整えた。

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「チップ設計会社は一般的に他社と組むのを嫌がる。利益をシェアしたくないからだ。でも私はシェアするのが好きだ。市場がどんどん大きくなっているからね」とパクは述べている。

今後のより大きな課題は、海外の新規顧客の獲得だ。2024年8月に、パクはサウジアラムコと初の契約を結び、同社のデータセンターにAIチップを供給することになった。これは、アラムコ傘下のWa’ed Venturesが7月に1500万ドル(約21億4000万円)をリベリオンズに出資(同社にとって韓国での初投資)した直後のことだった。また同社は、昨年の年末までに、米国、日本、タイからの注文があったいう。リベリオンズは、今年の売上次第で2026年にも新規株式公開(IPO)を行う可能性があるとパクは語っている。

KAIST AI半導体大学院のユ・ホイジュン院長もリベリオンズに期待を寄せている。「彼らは、高速メモリとAIの最適化の最前線を切り開いている」とユ院長は述べ、リベリオンズが世界のチップ業界で「最も注目すべき存在の一つとして語られている」と指摘した。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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