4月になると気持ちが明るくなり始める。これまでよりも幸せで、気分は軽やか、活力がみなぎる。そんな考えがネット上で広まっている。「エイプリル・セオリー」と呼ばれるもので、単にネット上の新たなトレンドのように聞こえるかもしれないが、真実もいくらか含まれているようだ。
パキスタンの大学が実施した調査(2021年1月~8月。15歳から25歳までの男女学生352名が対象)によると、学生たちの感情の状態は秋よりも春に良いことがわかった。春には気分や心理的ウェルビーイング(訳注:自己受容、ポジティブな人間関係、自律性、環境への適応力、目的意識、人格的成長などの心理的な要素を含む概念)が著しくいい状態で、学業の成績も向上していた。
実際のところ、春には本当に変化がみられる。日が長くなり、日差しが強くなるにつれて人間の体も反応する。独ベルリン自由大学の生物心理学教授であるピーター・ウォルシュバーガーによると、人間は暗闇の中では休息し、光を浴びるとより活動的になり、気分が高揚するようにできているという。そのため、明るい日差しが降り注ぐ春の日には人は自然と屋外に出たくなる。
春の変化は日差しにとどまらない。周囲の環境も目覚める。空気が暖かくなり、木々が芽吹く。また、鳥のさえずりが聞こえるようになるなど、それらすべてが作用する。ウォルシュバーガーはこれを「一般的共鳴効果」と呼んでいる。周囲のあらゆるものがあなたの感覚を刺激し、冬の静寂から引きずり出す。
外で会う人が増えると、これまで以上につながりを感じ、オープンになる。そして多くの場合、楽観的になる。
私たちの心は自然とこの明るいエネルギーに同調し、春はポジティブな変化が起こる時期となる。
エイプリル・セオリーをうまく活用する3つの方法を以下に紹介しよう。
1. 「4月はリセット月間」と自分に言い聞かせる
時として、最も重大な変化は考え方の微調整から始まる。そのわずかな変化により、4月は象徴的な転換の時となりえる。それは、何か魔法のようなことが起こるからではなく、あなたがそのように考えると決めるからだ。
心機一転を図ることを決意し、そう自分に言い聞かせることにはパワフルな効果がある。確証バイアスがあなたにとってプラスに働く可能性があるのだ。
確証バイアスとは、自分が信じていることを裏付ける証拠を探そうとする傾向を指す。私たちは常にこの行動をとっており、多くは意識せずに行っている。もしあなたが「今日はストレスの多い一日になりそうだ」と思っていると、遅延やうまくいかないことに気づきやすくなる。
これに対して、今月は成長し、気持ちも晴れるはず、あるいは回復する月だと信じていれば、そうした思いを支えるものを探し始めるだろう。散歩をした後に気分が落ち着いたり、部屋を片付けるとやる気が高まったりするなど、自然と思い込みを裏付けるものに気づき始める。
4月を他の月と同じように見るのではなく、考え方を変えるきっかけとして活用してほしい。「今月はすべてが思い通りになり始める月だ」と自分に言い聞かせてみよう。そして、そうなるように行動を起こそう。そうすれば、行動を起こさなければ見過ごしていたかもしれないチャンスや気持ちの面での「勝ち」に気づくはずだ。
大切なのは、不快感を無視したり、すべてが完璧であるかのように振る舞ったりすることではない。良いことに気付ける心の余裕を生み出すことだ。回復し、成長できると再び信じる月にしよう。