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2025.04.09 12:30

自然や音楽で生じる「畏敬の念」、脳を研ぎ澄ますそのユニークな力

Shutterstock.com

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巨大な渓谷の端に立って夜空に広がる無数の星を眺めたり、思わず涙するような音楽を聴いたりしているところを想像してみてほしい。そうした瞬間に驚くべきことが起こる。謙虚な気持ちになり、気分が高揚する。「畏敬の念」として知られるこうした強い感情にはモノの見方を変え、人生に対して神秘さを感じたり感動したりする感覚を呼び覚ます力がある。

幸いにも、畏敬の念は極めて大きな出来事に直面したときだけ生じるものではない。見知らぬ人に親切にされたり愛する人の笑い声を耳にしたりと、平凡な出来事でも畏敬の念を抱くことができる。

心理学者のダッチャー・ケルトナーが著書『Awe: The New Science of Everyday Wonder and How It Can Transform Your Life』で書いているように、畏敬の念は束の間の心地よい体験以上のものをもたらし、心身のウェルビーイングに大きく影響する。

畏敬の念は脳の機能や周囲との関わり方にポジティブな影響を与えるなど、認識の面でも大きな恩恵があることはあまり知られていないかもしれない。創造性の向上から意思決定の改善まで、畏敬の念には脳を研ぎ澄まし、考え方を一変させるユニークな力がある。

研究で指摘されている、畏敬の念が心理面で大きな効果をもたらす3つの理由を紹介する。

1. 時間の感覚を変える

多くの人は「時間に追われている」、あるいは忙しい日々の中で時間がないと感じており、これは健康やウェルビーイングに影響を及ぼす。

専門誌『サイコロジカル・サイエンス』に掲載された研究によると、畏敬の念を抱くことで、人は急かされたているように感じたり、イライラしたりすることが少なくなり、他の人のサポートに時間を費やすようになるという。また、人生の満足度が高まり、ガジェットや服など物を所有するよりも、旅行やアクティビティなどの体験を求めるようになる。

畏敬の念で時間の感覚が研ぎ澄まされることで、美しい夕日や楽しい会話をありがたく思うなど、楽しい瞬間をより満喫できるようになるかもしれないと研究者らは指摘している。畏敬の念には、実際よりも時間があるように感じられるようにするだけでなく、時間の使い方を改善する可能性もあるようだ。

このような認識の変化は精神・感情面でのウェルビーイングに大きな恩恵をもたらす。満ち足りた気持ちになるとストレスが軽減され、処理する情報量が多いことで発生する認知負荷が減り、自分にとって重要なことに集中しやすくなる。

2. 好奇心と学習意欲を促進

畏敬の念は周囲との関わり方や学び方に大きな影響を与える。最も顕著な効果の1つは対象への関心が高まり、学習意欲をかき立てることだ。

畏敬の念を経験すると、私たちは新しい情報に対して前向きになる。多くの注意を向けている状態は好奇心の高まりにつながり、新たな知識を得ようと模索するようになる。

専門誌『コングニション・アンド・エモーション』に2024年に掲載された研究では、プラネタリウムでの映画鑑賞で湧き起こった畏敬の念が、感情やコンテンツへの興味にどのような影響を及ぼすかを調べた。調査の結果、畏敬の念から映画のテーマに対して関心が高まることがわかった。

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翻訳=溝口慈子

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