サイエンス

2025.04.05 16:00

なぜ伝わらない? わかり合えるコミュニケーションのために抑えておきたい3つの技術

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個人的であれ仕事上であれ、私たちが人間関係で直面する多くの困難は、突き詰めればコミュニケーションの問題に行き着くことが多い。話す量を増やせば解決すると考えがちだが、実際には多くの人が無自覚のうちに誤ったアプローチで会話に臨み、不満や対立、感情的な断絶を引き起こしている。

誰しも、会話が思わぬ方向に転じた瞬間を経験したことがあるはずだ。単なる意見交換のはずが口論に発展したり、共感しようとしているのに、相手に自分の気持ちが伝わっていないと感じさせてしまったりするような場面である。

多くの場合、これは敵意によるものではなく、コミュニケーション方法が噛み合わないことから生じる。ほんの少し意識を変えるだけで、会話がスムーズに進みやすくなり、相手との相互理解が深まって関係性が改善する。

2024年に出版された『Supercommunicators: How to Unlock the Secret Language of Connection』において、著者でジャーナリストのチャールズ・デュヒッグは、もっとも効果的なコミュニケーターはただ話すのではなく、「聞き、適応し、意図をもって応答する」ことを探求していると述べている。彼らはあらゆる会話の背後にある複雑な力学を理解し、それに応じてアプローチを変えているのだ。

コミュニケーションを形作るパターンを理解すれば、より意味のあるつながりを生み出せる。そしてよくある落とし穴を避け、人と関わる方法を本当に理解している人になれるのだ。以下に、そのための3つの方法を示そう。

1. 会話の種類を認識する

コミュニケーションが行き詰まる最大の理由のひとつは、話し手同士の期待が異なることだ。たとえば自分は感情面での共感を求めて課題を打ち明けているのに、相手は論理的な解決策ばかり提示してくるといったミスマッチである。このような食い違いが会話の流れを乱し、関係を深めるチャンスを損ねる。

2022年に『Current Opinion in Psychology』に掲載された研究では、「会話円環モデル」(Conversational Circumplex)という新しいフレームワークが紹介されている。これは、会話の背後にある動機を整理する仕組みで、やりとりが成功したかどうかを判断するには、まず参加者が何を目的に会話しているのかを知る必要があると指摘している。このフレームワークは学術的研究だけでなく、実社会の会話にも役立つツールだ。

この「会話円環モデル」では、目的を次のふたつの軸に沿って整理する。

a. 情報軸

・情報意図が高い:有益な情報を交換したい(質問、指示、意思決定など)
・情報意図が低い:正確な情報の共有は重視しない(雑談、冗談、気まずさ回避など)

b. 関係軸

・関係意図が高い:感情的なつながりや関係を強化する(サポートを示す、謝罪する、気遣いを伝えるなど)
・関係意図が低い:関係構築よりも個人のニーズを優先する(優位性を主張する、深い関与を避けるなど)

自分への問いかけ

コミュニケーションを改善するために、自分自身に次のように問いかけてみよう。

・これは何かの問題を解決する会話か(実務的な会話)
・感情的なサポートや共感を必要としているのか(感情的な会話)
・絆を深めたり、雰囲気を和ませたり、関係を維持することが目的か(社交的な会話)

自分がどの種類の会話をしているのかを意識するだけで、相手の求めるものに合わせて返答を調整したり、会話をあるべき方向に導いたりしやすくなる。こうした単純な認識が不必要なフラストレーションを防ぎ、関係性をより深めることにつながる。

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翻訳=酒匂寛

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